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第 255話
いやしい話
鹿児島県の民話 → 鹿児島県の情報
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投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読
【大人もぐっすり眠れる睡眠朗読】クスッと笑える楽しいとんち 日本昔ばなし集 元NHKフリーアナ
むかしむかし、薩摩の国(さつまのくに→鹿児島県)に、とんち名人がいました。
殿さまはとんち名人の事がお気に入りで、ひまがあればとんち名人を城によんで、とんち名人のとんちを楽しんでいたのです。
しかし上品な殿さまは、とんち名人のある事が気に入りませんでした。
それはとんち名人が、おならとか、うんことか、おしりの話を良くするからです。
「これ、お前は人前で、いやしい話を平気で言うが、あれは困るぞ」
するととんち名人は、首を傾げて言いました。
「殿さま。いやしい話とは、何でございましょう?」
「その、なんじゃ、おしりの話とかな」
「ああ、おしりの話ですか。しかし、おしりと言う物は、むかしから「ふくじり」などと言って、縁起の良い物でございますが」
「いや、いかんいかん。これからは、しりと言う言葉は使わぬように」
「それは、難しいご注文ですね」
「何が、難しい? 簡単な事ではないか」
「そうでしょうか?」
「そうじゃ」
「・・・では、もし殿さまが使われたら、いかがなさります?」
「おほほほ。もしわしが使ったら、お前に金千両をつかわそう。その代わり、お前が約束を破ったら、今後一切、城への出入りを禁じるぞ」
「はい、承知しました」
次の日、とんち名人は城へ顔を出す時間になっても、なかなかやって来ませんでした。
「今日は、遅いのう」
その日は昼近くになってから、ようやくとんち名人がやって来ました。
殿さまは、少し機嫌を悪くして言いました。
「これ、遅いではないか。どうしたというのだ?」
「はい、ちょっと急ぎの用事で、友だちの所へ寄りましたもので」
「そんなに、手間取る用か?」
「はい、お茶をすすめられまして」
「なに? 茶を飲むのに、なぜそんなに手間がかかるのだ?」
「はい。それがいくら待っても、なかなかお茶が出てこないので、不思議に思い、そっと裏座敷をのぞいて見ますと・・・」
「うむ、のぞくと・・・」
「友だちは木の茶がまで、お湯をわかしておりました」
「何と、木の茶がまだと?」
「はい、さようで」
「何を馬鹿な。それでは茶がまのしりが、焼けるではないか」
それを聞いたとんち名人は、ニヤリと笑いました。
「ははーん。殿さま、今、確かに言いましたよ。しりという言葉を」
「・・・あっ、しまった。これはやられた」
こうしてとんち名人は、殿さまから千両を頂いたということです。
おしまい
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