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第 342話
勘作(かんさく)のとんち
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むかしむかし、大村藩の城下町(→長崎県大村市)から十二キロほど離れた日泊(ひどまり→長崎県大村市日泊町)というところに、長沢勘作(ながさわかんさく)という頭の良い侍がいました。
ある日の事、勘作が家の畑で草むしりをしていると、向こうからいかつい顔の侍がやって来て偉そうに言いました。
「おい、そこの百姓、諫早(いさはや→長野県諫早市)はどっちだ!?」
しゃくにさわった勘作は、足で畑の土をけとばしながら答えました。
「あっちだ!」
その勘作の態度が気に入らなかった侍は、怖い顔で腰の刀を抜きました。
「おのれ百姓のくせに、武士に向って何という態度じゃ! 無礼者は、手討ちにいたす」
これには、勘作もびっくりです。
(相手は本気だな。ここは謝った方が良いのか?)
でも勘作も侍なので、謝ったり逃げたりする事はできません。
そこでとっさに、家の方に向かって大声で叫びました。
「おーい。これから真剣勝負をするから、清正公拝領(きよまさこうはいりょう)の朱塗りの槍を持ってこい!」
それを聞いた侍は、顔を真っ青にして震え出しました。
「清正公拝領の槍だと! ・・・いかん、とてもかなう相手ではない」
侍はそう言って、しっぽを巻いて逃げていきました。
「やれやれ、逃げてくれて助かった」
武芸がまるで駄目な勘作は、ホッと胸をなでおろしました。
おしまい
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