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6月23日のイソップ童話
ライオンとプロメテウスとゾウ
動物たちをつくったのは、プロメテウス(→詳細)の神だとされています。
この神さまのところへ、ライオンがたびたび泣き言をいってきました。
「プロメテウスの神さま。たしかに、あなたはわたしのからだを大きく、りっぱにつくってくれました。キバも爪もつけてくれて、おかげで、わたしはどんな動物よりも強くなっています。でも、それでもまだ、わたしはニワトリがこわくて、こわくて、たまらないのです」
「それがわたしのせいだなんて、かるがるしくいうな」
プロメテウスの神は、ライオンをしかりました。
「おまえには、できるかぎりすぐれたからだをあたえてやったのだ。ニワトリがこわいのは、心の持ち方のせいだぞ」
こう言われて、ライオンはすっかりひかんして、
「ぼくはいくじなしなんだなあ」
と、なげきました。
考えれば考えるほど、なさけなくなって、いっそ死んでしまおうと思うほどになりました。
ライオンがこんな気持ちでいると、向こうからゾウがやってきました。
「こんにちは、ゾウくん」
と、ライオンはあいさつして、立ち話をはじめました。
話しながら見ると、ゾウはひっきりなしに耳をうごかしています。
「きみ、どうしたの。きみの耳はどうしてじっとしていないの」
「きみにも見えるだろう」
と、ゾウはいいました。
なるほど、一ぴきのカが、ゾウのまわりを飛び回っています。
「ブンブンいう、このちっぽけなやつが見えるだろう。もしこいつがぼくの耳の中に飛び込んだらとおもうと、もう、こわくてこわくて」
ゾウがこう言うのを聞いて、ライオンは考えました。
「ぼくは、死ななくてもいいな。だって、ぼくより大きなゾウくんが、ニワトリよりも小さなカをこわがっているのだから」
よわむしの人も、じぶんよりもよわむしの人を見れば、安心するのです。
おしまい