|
|
3年生の日本昔話(にほんむかしばなし)
病気(びょうき)のお見舞(みま)い
むかしむかし、きっちょむさんと言う、とてもゆかいな人がいました。
あるとき、庄屋(しょうや)さんが、かぜをひいてしまいました。
「庄屋(しょうや)さんは口うるさいから、見舞(みま)いにいっておかんと、あとでなにをいわれるかわからん」
村の人たちは、つぎつぎに見舞(みま)いにでかけましたが、ひねくれもののきっちょむさんは、みんなが見舞(みま)いをおえたあとに、ひとりでノコノコとでかけていきました。
「庄屋(しょうや)さん、おかげんはいかがでしょうか?」
「村のものが、みんなはやく見舞(みま)いにきてくれたというのに、おまえはいったい、いまごろまでなにをしておった。なにをさておいても、見舞(みま)いにかけつけるのが、れいぎというものではないか」
庄屋(しょうや)さんは、プリプリと文句(もんく)を言いました。
「いえ、じつは、庄屋(しょうや)さんにもしものことがあってはと、お医者(いしゃ)さんをよびにいったのです。あいにく、お医者(いしゃ)さんはでかけてましたんで、またかえりに、よってたのんでいきます」
すると庄屋(しょうや)さんは、たちまちきげんをなおして、
「そうか、そうか。さすがはきっちょむさんじゃ。よく気がきく。しかったりして、わしがわるかった。お医者(いしゃ)さんには、もうだいじょぶだからと、いってくれまいか」
と、きっちょむさんを、酒(さけ)やごちそうでもてなしました。
ところが、いくにちかたつと、庄屋(しょうや)さんのかぜがぶりかえしたというので、村のみんながまた、ぞろぞろと見舞(みま)いにでかけました。
きっちょむさんが、いちばんあとから見舞(みま)いにいくと、庄屋(しょうや)さんは、いきもたえだえで、
「ああ、よくきてくれた。こんども気をきかして、お医者(いしゃ)さまをよんできてくれたか?」
と、きっちょむさんの手をとりました。
ところが、
「いやいや。どうも、こんどばかりはたすかりそうもないとおもって、お寺のお坊(ぼう)さんをよびにいったり、お葬式(そうしき)の棺(かん)おけやら、おつやのあとに出す、料理(りょうり)の材料(ざいりょう)のてはいをしてきまして。それで、すっかりおそくなりました」
きっちょむさんの、あまりのてまわしのよさに、庄屋(しょうや)さんはおこったのなんの。
「バカ者(もの)! わしは、まだまだ死(し)なんぞ! 気をきかすにも、ほどがある!」
カンカンにおこったいきおいで、庄屋(しょうや)さんの病気(びょうき)は、なおってしまいました。
おしまい
|
|
|