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5年生の日本昔話
はかばへいくむすめ
むかしむかし、あるいなかに、たいそうな長者(ちょうじゃ)がいました。
長者には、きれいなひとりむすめがいて、もうとしごろです。
そこで、むこさんをとることになりました。
すると、うわさがすぐにひろがって、
「よし、じぶんこそが、むこさんになろう」
と、むこさんの希望者(きぽうしゃ)が、おおぜいくるようになりました。
ところが、つぎの朝には、
「あんなおそろしいむすめのむこになるなんて、とんでもないこった」
だれもが、にげだしてしまうのです。
この話を耳にした、旅の男が、
「これは、なにかわけがありそうだ。おもしろい。べつに、むすめのむこにはきょうみはないが、それをつきとめてやろう」
と、長者のやしきをたずねました。
男はひとりもので、なかなかの男まえです。
そのうえ、とてもどきょうがあります。
「わしのむすめのむこになりたいとは、ありがたい。しかし、むすめにはへんなくせがありましてな。真夜中(まよなか)に、どこへともなくでかけていくのです。むすめがどこへいって、なにをしているのか、それをみとどけてくれたなら、おまえさんをむこにむかえましょう」
「わかりました」
長者の話に、男はうなずきました。
さて、そのばんの真夜中。
男がむすめのへやのようすを、それとなくうかがっていると、むすめがロウソクを手に、白いきものすがたであらわれました。
長いかみをふりみだして、うらにわのほうへとでていきます。
まるでゆうれいのようでしたが、男はきもちをおちつけると、むすめのあとをつけていきました。
むすめがやってきたのは、なんと、はかばでした。
「はて。いったい、なにをするつもりだろう?」
男がものかげからのぞいていると、むすめはクワでかんおけをほりだして、ふたをあけました。
そして、かんおけの中にあった、死んだ人のほねをポキンとおって、ポリポリとうまそうにたべはじめたではありませんか。
ふつうの男なら、「ギャーッ!」とさけんでにげだすか、こしをぬかしてしまうところですが、男はどきょうをすえて、じっくりとかんさつしました。
むすめは、死んだ人のほねをうまそうにたべると、ニンマリと口のまわりをなめながら、やしきのほうにもどっていきました。
男はむすめがいなくなると、かんおけにかけよって、中をしらべます。
かんおけには、むすめがたべのこしたほねがちらばっていました。
そのほねを手にとってしらべると、フンワリと、あまいにおいがします。
「これは、もしや」
口に入れてみると、あまいアメではありませんか。
「よし、長者にもっていってやろう」
男はほねのかたちにつくられたアメをもって、長者のやしきへもどると、さっそく、みてきたとおりのことをはなしました。
「これが、そのアメです。おたべください」
「いや、たべんでもわかっておる。わしがむすめとそうだんして、アメ屋につくらせたアメじゃからな。わしらは、このやしきのむこにふさわしい、どんなことにもおどろかん、きもちのおちついた男をさがそうと、どきょうだめしをさせてもらったんじゃ。おまえさんほどの男はいない。どうか、むこになっていただきたい」
「いえ、わたしはべつに、むこには・・・」
男がことわろうとするのも聞かず、長者はむすめをよびました。
すると、きれいなきものをきたむすめがあらわれ、
「すえながく、おねがいいたします」
と、おじぎをしました。
「あっ、その、・・・はい。こちらこそ」
あくる日、男とむすめは、三々九どのさかずき(→結婚(けっこん)のぎしき)をかわして結婚(けっこん)し、しあわせにくらしたそうです。
おしまい
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