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6月20日の日本の昔話

十七毛ネコ

十七毛ネコ

 むかしむかし、きっちょむさん(→詳細)と言う、とてもゆかいな人がいました。
 あるとき、きっちょむさんは町で、こんな話しを耳にはさみました。
「オスの三毛ネコ(→ネコの毛色で、白・黒・茶の三色の毛がまじっているネコ)を、船にのせておくと、どんなにひどいあらしにあっても、しずむことがない。それで船乗りは、オスの三毛ネコを、よいねだんでかいとるんじゃと。メスはいくらでもおるが、オスの三毛ネコは、めったにおらんからのう」
 きっちょむさんはしめたとおもって、はまの船乗りのところへいくと、
「わしのうちには、オスの三毛ネコより、もっとめずらしい、十七毛のオスネコがおるわい」
と、へんなじまんをしました。
「ほう、十七毛とはめずらしい。ゆずってくれんか?」
「いや、うるわけにはいかん。なにしろ、わしのうちのたからものじゃ」
 そういわれると、船乗りは、ますますほしくなって、
「五両(三十五万円)だすが、どうだ?」
と、いいました。
「まあ、それほどにいうなら、しかたあるまい。うることはできんが、しばらくかすことにしよう」
 そこであくる日、船乗りは、わざわざきっちょむさんのうちをたずねてきました。
「大事にしている物をかりるのだから、だだでは申し訳ない。おれいのしるしに、一両(七万円)とっておいてくれ」
「せっかくのおこころざしですから、ありがたくいただきましょう。では、おすの十七毛のネコを連れてきますでな」
 きっちょむさんは、おし入れから、きたない三毛ネコをつまみだしてくると、船乗りにいいました。
「よくかぞえてくだされよ。こいつはオスの三毛ネコじゃが、このあいだ、火ののこっているかまどにもぐりこんで、せなかをちょいとヤケドしました。つまり、八毛」
「しかし、きっちょむさん。三毛と八毛をたしても、十一毛にしかならんぞ。十七毛には、まだ六毛たらんのではないかね」
「いやいや。しりのところの毛が、むけておりましょう。つまり無毛(六毛)。三毛と、八毛と、六毛。ぜんぶあわせると、十七毛」
「うーん、こりゃあ、まいった」
 ふなのりは、きっちょむさんのとんちに感心すると、ほかの船乗りにも同じ話しで自慢(じまん)してやろうと、その十七毛ネコを持って、よろこんで帰りました。

おしまい

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