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7月3日の日本の昔話

弥じゃどんの首

弥じゃどんの首

 むかしむかし、弥(や)じゃどんという百姓(ひゃくしょう→詳細)が、となり村へいこうと川をわたっていました。
 ヒョイと舟の上から流れを見ると、きれいにすんだ川底に、大きな川ガニが何匹も見えています。
 そこで弥じゃどんは、かついでいた草刈(くさかり)ガマのさきで、川ガニをおいまわしていました。
 すると。
 ボッチャン!
と、音がして、川の中へなにかがおちました。
 なんとそれは、弥じゃどんの首でした。
 弥じゃどんは、うっかり自分の首を、カマでバッサリ切りおとしてしまったのです。
「はて、どこかで見たような首じゃが。えーと、いつじゃったかな。ひと月まえ、いや、きのうか。いや、けさ。そうじゃ、けさ見た首じゃ。そうじゃ、けさ顔をあろうたとき、手おけの水にうつったおれのかおにそっくりじゃ。それにしても、よくにた首もあるものじゃなあ」
と、ヒョイと片手を、自分の首にあててみました。
「ありゃ、首がない」
 いままで、たしかについていた首がありません。
「すると、あの首はおらの首か。まあ、よかった。はやいとこ気がついたおかげで、遠くまで流されずにすんだってもんだ」
と、いそいで川の中から自分の首をひろいあげると、また、もとのどおりにポンとのせました。
「やれやれ。よかった、よかった」
 弥じゃどんは、ホッとして舟をこぎだしました。
 やがてむこう岸につくと、弥じゃどんは、はなうたをうたいながら、となり村のほうへ歩いていきました。
 ところが、歩いても歩いても、いっこうにとなり村へはつきません。
「はて、おかしい。方角をまちがえるはずはなし、道にまよったわけもないが」
 ブツブツいいながら歩いているうちに、なにやら見おぼえのある家の前にやってきました。
 立ちどまって、よく考えてみると、それは自分の家でした。
「これはふしぎ。いったい、どうしたことじゃ?」
 どうしてもとへもどってしまったのか、さっぱりわけがわかりません。
と、なんだか首すじが、へんなぐあいです。
「はて?」
 弥じゃどんは、手を首のところにあててみて、ハッとしました。
「こりゃいかん。首がうしろまえについとる」
 さっき首をひろってつけたとき、あんまりあわてたもので、首をうしろむきにのせてしまったのでした。
 これでは、先にいくつもりでも、もとへもどってしまいます。
 弥じゃどんは、にがわらいをすると、いそいで首のむきをかえて、こんどはほんとにとなり村にむかって、でかけていったそうです。

おしまい

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