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3年生の日本昔話(にほんむかしばなし)
イヌ飼(か)い七夕
むかしむかし、一人のイヌ飼(か)いがいました。
お気にいりのイヌを連(つ)れて、池のそばを通ると、イヌが急(きゅう)にほえるのです。
「いったいどうした? ・・・あっ!」
ふと見ると、美(うつく)しい娘(むすめ)が、水あびをしているではありませんか。
「あれは、うわさに聞いた天女(てんにょ)だな。天女なら、きっとどこかに羽衣(はごろも)をぬいでいるぞ」
イヌ飼(か)いは、イヌにいいました。
「そこらじゅう、かぎまわって、さがし出せ」
しばらくして、天女が池からあがってきましたが、羽衣(はごろも)が見つかりません。
イヌ飼(か)いが、かくしていたのです。
羽衣(はごろも)がなければ、天へ戻(もど)れません。
天女は、こまってしまいました。
「・・・どうしたら、いいのだろう」
そこへ、イヌ飼(か)いが現(あらわ)れてきて、
「おこまりのようだな。よければ、わしのうちにきなさらぬか?」
しかたありません。
天女は、イヌ飼(か)いの家にいきました。
そして、イヌ飼(か)いの嫁(よめ)になったのです。
ふたりは仲(なか)よく暮(く)らして、あっというまに日がたちました。
ところがある日、嫁(よめ)になった天女が、隠(かく)してあった羽衣(はごろも)を見つけてしまいました。
「あんまり、ひどい!」
天女は羽衣(はごろも)をつけると、空高く舞(ま)いあがっていきました。
「待(ま)っておくれ。いかないでおくれ」
イヌ飼(か)いが声をはりあげましたが、天女は空の向(む)こうへ消(き)えて、二度(にど)と戻(もど)ってきませんでした。
それから毎日毎日、イヌ飼(か)いは嫁(よめ)の天女のことを思うと、仕事(しごと)にも手がつきません。
「どうすれば、嫁(よめ)を連(つ)れ戻(もど)せるか」
イヌ飼(か)いは、うらないのおばあさんのところへ出かけていきました。
すると、うらない師(し)は、
「それは、できないことだよ。だが、おまえの方から訪(たず)ねていけばいい」
うらない師(し)は、天女のところヘいくには、一晩(ひとばん)に百足のわらじをつくらねば、といいました。
「それを土に埋(う)めて、その上に、へちまの種(たね)をまくがいい」
イヌ飼(か)いはその晩(ばん)、てつ夜でわらじをつくりました。
でも、夜が明けたときには、九十九足しかできあがっていません。
「一足たりないけれど、百足とは、あまり変(か)わるまい」
そして、うらない師(し)のことばどおり、へちまをまくと、どうでしょう。
へちまのつるは、ドンドンドンドンのびて、今にも天に届(とど)きそうになりました。
「よし、おまえもついてこい」
イヌ飼(か)いはイヌとともに、へちまのつるをのぼっていきました。
だけど、天女の嫁(よめ)がいる天が、もう少しだというところで、へちまのつるは、のびるのをやめたのです。
「なんということだ。わらじが一足たりないばかりに!」
イヌ飼(か)いが、くやしがっていると、後からついてきたイヌが、イヌ飼(か)いの頭を越(こ)えて、ピョンと天にとびあがったのです。
そして、
「それ、だんなさま!」
イヌはしっぽを、たらしてくれました。
「ありがたい」
イヌ飼(か)いは、イヌのしっぽをつかむと、天に飛び上(とびあ)がりました。
そして天に飛び上(とびあ)がったイヌ飼(か)いは、彦星(ひこぼし)に、嫁(よめ)の天女は織り姫(おりひめ)になったということです。
おしまい
たなばたのおりがみをつくろう おりがみくらぶより
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