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2年生の日本昔話(にほんむかしばなし)
ゆうれいの酒盛(さかも)り
むかしむかし、あるところに、一軒(1けん)のこっとう屋(や)がありました。
このこっとう屋(や)、今日(きょう)はあいにく主人夫婦(しゅじんふうふ)がるすで、おいっ子の忠兵衛(ちゅうべえ)という男がるす番(ばん)をしています。
そこへ、金持(かねも)ちそうなお客(きゃく)がやってきました。
「ふむ、山水(さんすい)か、ちょっとへいぼんじゃな。ふうむ、書(しょ)か。下手くそな字じゃ。どいつもこいつも、ありきたりでつまらん」
そのとき、客(きゃく)の目が、かがやきました。
「むむっ、こいつはめずらしい! 気にいった。このかけじくは、いくらだ?」
それは、女のゆうれいの絵(え)のかけじくでした。
おじさんがただ同然(どうぜん)で買(か)ってきた、ガラクタでしたから、二十文(→六百円ほど)ももらえば十分(じゅうぶん)だとおもって、忠兵衛(ちゅうべえ)は客(きゃく)に指(ゆび)を二本出して見せました。
「なに、二十両(20りょう→140まんえん)? そいつは安(やす)い!」
と、客(きゃく)は大よろこびです。
「えっ? 両(りょう)? いや、あの、その・・・」
目をパチクリさせている忠兵衛(ちゅうべえ)に、客(きゃく)は、さいふをわたしていいます。
「いまは、持(も)ちあわせがないので、手つけ(→契約金(けいやくきん))だけはらっておこう。のこりは明日(あした)持(も)ってきますから、だれにも売(う)らないでくださいよ」
忠兵衛(ちゅうべえ)が客(きゃく)を見送(みおく)り、さいふの中を見てみますと。
「うひゃあ、すごい大金!」
おじさん夫婦(ふうふ)のるすの間(あいだ)に、おもわぬ大金を手にした忠兵衛(ちゅうべえ)は、すっかりうれしくなり、ゆうれいのかけじくを前(まえ)で、一人で酒盛(さかも)りをはじめたのでした。
「ちょっと店番(みせばん)をして、二十両(20りょう)。わらいがとまらねえとは、このことだ。しかし、二十両(20りょう)とおもって見ると、このゆうれい、なかなかの美人(びじん)だな」
そして、かけじくの中のゆうれいにむかって、
「おめえさんのおかげで、かせがせてもらうのに、一人で飲(の)んでちゃ、もうしわけねえ。おい、おめえさん、ちょっと出てきて、おしゃく(→お酒(さけ)をつぐこと)でもしてくれや」
と、いったそのときです。
夏(なつ)だというのに、あたりがスウーッと冷(つめ)たくなり、風(かぜ)もないのに、あかりがパッと消(き)え、ふと気づくと、目の前(まえ)に見知(みし)らぬ女の人が立っているのです。
「ん? ま、まさか」
忠兵衛(ちゅうべえ)が、かけじくを見ると、かけじくはもぬけのから、まっ白けです。
「ぎゃあ! で、出たあ!」
なんと、かけじくのゆうれいは美人(びじん)とほめられたのがうれしくて、ほんとうに、おしゃくをしに出てきたのです。
はじめはこわがっていた忠兵衛(ちゅうべえ)も、美人(びじん)のゆうれいのおしゃくで、すっかりいい気分(きぶん)になりました。
おまけに、そのゆうれいの酒(さけ)の強(つよ)いこと。
忠兵衛(ちゅうべえ)がうたえば、それにあわせてゆうれいがおどります。
二人は夜(よる)どおし、飲(の)めや歌(うた)えやのどんちゃんさわぎ。
次(つぎ)の朝(あさ)、すだれからさしこむ朝(あさ)の光(ひかり)で、忠兵衛(ちゅうべえ)は目がさめました。
「ふわ〜。もう朝(あさ)か。しかし、へんな夢(ゆめ)をみたもんだ」
と、部屋(へや)を見まわして、おどろいたのなんの。
かけじくの絵(え)のゆうれいが、ねているではありませんか。
「ね、ねてる!」
忠兵衛(ちゅうべえ)はゆうれいを見ながら、泣(な)きそうな顔(かお)をしてつぶやきました。
「う〜ん、こまったなあ。早くおきてもらわないと、二十両(20りょう)がパーになっちまうよう」
おしまい
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