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3年生の日本昔話(にほんむかしばなし)
舟(ふね)の渡し賃(わたしちん)
むかしむかし、きっちょむさんと言う、とてもゆかいな人がいました。
あるとき、きっちょむさんが、庄屋(しょうや)さんによばれました。
「すまない、きっちょむさん。渡し舟(わたしぶね)のせんどうが病気(びょうき)でたおれてしまったんだ。今日だけでいいから、代(か)わりに渡し舟(わたしぶね)のせんどうになってはくれまいか」
「はい、いいですよ」
と、いうわけで、きっちょむさんは、今日一日、村の渡し舟(わたしぶね)のせんどうです。
「ひまじゃな。だれか、客(きゃく)がこないかなあ」
川べりでタバコをいっぷくしていると、旅(たび)の侍(さむらい)がやってきました。
「これ、せんどう。渡し賃(わたしちん)はいくらだ?」
「はい。かたみち、八文(→二百四十円ほど)のきまりになってます」
すると、旅(たび)の侍(さむらい)が、
「八文とはたかい。六文にいたせ!」
いばって、命令(めいれい)しました。
きっちょむさんは、
(このケチざむらいめ)
と、思いましたが、けんかをしても、負(ま)けてしまいます。
「さあ、舟(ふね)を出しますよ」
きっちょむさんは、侍(さむらい)をのせてこぎだしました。
ところが、あと少しで向こう岸(むこうぎし)につくというところで、きっちょむさんは舟(ふね)をとめました。
「ここまでが六文です。あと二文だせば、岸(きし)までつけますが、どういたしましょう?」
「なんだと。ここでおりて、あとは泳(およ)いでゆけというのか!」
「いいえ、あと二文だせば、向こう岸(むこうぎし)までお送(おく)りします」
「ええい、こうなれば意地(いじ)比(くら)べだ。向こう岸(むこうぎし)までやれないのなら、もとの岸(きし)にもどせ!」
「へい、わかりました」
きっちょむさんは、すなおに舟(ふね)をもどすと、さむらいの前に手を出しました。
「六文のところを、行って帰ってきましたので、合計十二文ちょうだいいたします」
「・・・くそーっ! わしの負(ま)けだ!」
さむらいは十二文を払(はら)うと、どこかへ行ってしまいました。
おしまい
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