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2年生の日本昔話(にほんむかしばなし)
仁王(におう)とどっこい
むかしむかし、仁王(におう)という、すばらしい力持(ちからも)ちがいました。
もう、国(くに)じゅうでは、仁王(におう)にかなう者(もの)はいません。
「ずっと遠(とお)い、唐の国(からのくに→中国(ちゅうごく))に、どっこいという力持(ちからも)ちがいると聞(き)いたが、どーれ、出かけていって、一番(いちばん)、すもうでもとってくるか」
仁王(におう)は、はるばる舟(ふね)に乗(の)っていきました。
そしてようやく、どっこいの家(いえ)が見つかりました。
家(いえ)には、おばあさんがひとり、留守番(るすばん)をしていました。
「どっこいは、いるかな。日本一の仁王(におう)さまが、力比(ちからくら)ベにきたといってくれ」
仁王(におう)は、大声(おおごえ)でいいました。
すると、おばあさんは、
「今(いま)、じきに帰(かえ)ってくるでな、少(すこ)し待(ま)っててくれろ」
と、笑(わら)って、仁王(におう)に答(こた)えました。
おばあさんは、せっせとお昼(ひる)ごはんのしたくをしています。
仁王(におう)がだまって見ていると、かまどにはまきが、まるで火事(かじ)のように、ゴウゴウと燃(も)えています。
そして、その上にかかったカマの大きいこと、俵(たわら)の米(こめ)を、どかっと何俵(なんぴょう)も入れたようすです。
「そんなにいっぱい、ごはんをたいて、いったい何人(なんにん)で、いいや、何(なん)十人で食(た)べるんだね」
仁王(におう)は、ためしに聞(き)いてみました。
「これかあ、何(なん)十人なんてことあるかね。おらと、おらんとこの子どもと、あと、じいさまの三人で、きれいにたいらげるだで」
おばあさんは、平気(へいき)な顔(かお)をして答(こた)えました。
「・・・おらんとこの、子ども?」
と、いうのは、どっこいに決(き)まっています。
仁王(におう)はすっかりたまげて、これでは、とてもかなわないと思(おも)いました。
「ちょっくら、お便所(べんじょ)を貸(か)してくれや」
仁王(におう)は、からだがブルブルふるえてくるのをガマンして、便所(べんじょ)に飛(と)びこむなり、そこの窓(まど)から逃げ出(にげだ)しました。
遠(とお)くから、どっこいがもどってくる地(じ)ひびきが聞(き)こえてきます。
仁王(におう)は、大急(おおいそ)ぎで舟(ふね)をこぎ出し、海(うみ)に出ました。
さて、家(いえ)に帰(かえ)ってきたどっこいは、仁王(におう)がきたことをすぐにかぎつけました。
戸口(とぐち)の所(ところ)に、大きな足跡(あしあと)があります。
「ははん、こんなでっかい足をしているのは、日本の国(くに)の仁王(におう)しかいねえぞ。力比(くら)べにきただな。よしよし、仁王(におう)はどこにいるだ?」
どっこいが喜(よろこ)んで聞(き)くと、おばあさんが、
「あんれまあ、なんと長(なが)い、お便所(べんじょ)だベ」
と、いうので、そっといってのぞいてみると、中はからっぽです。
「さては、逃(に)げたな。ここまできて、おらと一番(いちばん)も勝負(しょうぶ)をしないで帰(かえ)るなんて、うわさほどでもない弱虫(よわむし)のひきょう者(もの)。よーし、ひっとらえて、やっつけてやるぞ」
どっこいは、大きなイカリをかついで、追(お)いかけていきました。
長(なが)い、長(なが)い、くさりのついた、ずっしり重(おも)いイカリです。
「おーい、待(ま)てえ!」
浜辺(はまべ)に着(つ)いたどっこいは、もう、ずっと海(うみ)のほうへこぎ出していった、仁王(におう)の舟(ふね)に向(む)かって、
「えいやっ!」
と、イカリを投(な)げました。
イカリは、ピューンと空を飛(と)び、先のとんがりが仁王(におう)の舟(ふね)につきささってしまいました。
長(なが)いくさりでつながれた、仁王(におう)の舟(ふね)は、あぶなく、どっこいの手に引(ひ)っぱりこまれそうです。
そのとき、ハッと、日本の国(くに)を出るときに、八幡(やはた)さまからもらったヤスリを持(も)っていたことを、思い出(おもいだ)しました。
どんな鉄(てつ)でも切(き)れる、ヤスリです。
仁王(におう)が、くさりをヤスリでこすると、くさりはプッツリと、切(き)れました。
とたんに、力いっぱい引(ひ)っぱっていたどっこいは、ズデーンと海(うみ)の中にしりもちをつきました。
どっこいは、切(き)れたくさりを見て、おどろきました。
「なんという怪力(かいりき)だ。おらでも、このくさりは切(き)れないのに。・・・勝負(しょうぶ)しなくてよかった」
それからです。
重(おも)い物(もの)を持(も)つときに、唐の国(からのくに)では「におう」とかけ声(ごえ)をかけ、日本では「どっこいしょ」というようになったのは。
おしまい
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