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2月8日の小話
まぬけな文吉
だんなのいいつけで、文吉(もんきち)が、小川に、竹ざおをあらいに行きました。
ところが、いつまでたっても帰って来ません。
だんなが気にして、ようすを見に行きますと、文吉が、竹ざおを川にうかべて、手もとの方ばかりあらっています。
「文吉! いつまで同じところをあらっているのだ! 先の方はすすだらけではないか! 手もとの方ばかりあらっていないで、先の方もあらうのだ!」
見かねて、だんなが、しかりつけました。
とたんに、文吉は、どぎまぎしながら、
「でも、だんなさま。あのあたりはとても深いので、中に入っていくのはむりでございます」
おしまい