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5年生の江戸小話(えどこばなし)
滝(たき)のぼり
「みずーい、水、水はいかがですかー?」
今の様に家に水道がないむかしは、水を売る水売りの声が、あちこちで聞かれていました。
ある日の事、両国橋(りょうごくばし)の上で、侍たちが何やら慌てて騒いでいました。
それと言うのも、侍たちが仕えている主人が、将軍さまに生きたコイを差し上げる事になっていたのですが、それを運んでいた侍のおけの中からコイがピョーンと跳ねて、そのまま川の中へ飛び込んでしまったのです。
「これは大変な事になってしまったぞ。あれほどのコイは、そう簡単には手に入らないからな」
侍たちがうろうろと、橋の上を行ったり来たりしていると、ちょうど通りかかった水売りが侍の話を聞いて、こう言いました。
「そんな事なら、あっしが捕まえて差し上げましょう」
「本当か。それはありがたい。しかし、どうやって捕まえるのだ?」
侍が尋ねると、水売りは売り物はの水を橋の上からサラサラサラと細めに流して、コイに向かって言いました。
「コイやコイ。滝だよ、滝。さあさあ、遠慮無く登っておいで。コイの滝登りだよ」
それを見て侍たちがあきれていると、逃げたコイが水売りの言葉につられて、本当に登ってきたという事です。
おしまい
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