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6月3日の小話
あんまの腹いせ
大家のだんなが、あんまさん(マッサージする人)に、腰をもませておりましたが、思いのほか下手なので、
「これ、あんまさん。おまえさんより、うちの下男(げなん→下働きの男の人)のほうが、なんぼ上手かしれんぞ。よくそれで、金を取る気になるものだ」
と、小言(こごと)がましくいいました。
あんまさんは、腹が立ちましたが、相手はお客さんなので、じっとがまんをして、もみ続けておりました。
やがて、腰から肩、肩から首すじと、もんできましたが、耳のあたりをもみはじめると、
(よし、いまだ)
と、ばかり、だんなの耳のあなを、しっかりおさえて、
「下手くそで悪かったな。この小言親父!」
と、どなったそうでございます。
おしまい