|
|
5年生の江戸小話(えどこばなし)
おしょうの約束
あるお寺に、とてもけちな和尚さんがいました。
毎日毎食のご飯がおかゆなので、小僧は腹が減って仕方がありません。
「おかゆを水気ばかりで、腹にたまらん。何とかして、和尚さんがおかゆ嫌いになる工夫はないだろうか?」
考えた小僧は、ある晩、和尚さんが食べるおかゆに塩をたっぷりと入れて、夜中にのどがかわくようにしました。
そして寺にある水がめや、やかんの水を、すっかり空っぽにしておきました。
さて、その晩遅く。
小僧は白い着物を来て井戸(いど)に隠れると、つるべ(→井戸の中の水をくむためのおけ)のなわをにぎっていました。
和尚さんは、そんな事とは知りません。
「今夜は、やけにのどがかわく。井戸の水をくみあげて飲もう」
和尚さんが、ねぼけまなこで井戸にやって来ると、井戸の中から小僧が怖い声で言いました。
「今頃、誰じゃ! わしは、井戸の神さまなるぞ。夜中に井戸を、使ってはならぬ!」
「わ、わしは、この寺の和尚です。今夜だけ、水を飲ませてください」
和尚さんが井戸の中をのぞくと、白い着物姿がぼんやりと見えます。
「誰だろうと、水を飲ませるわけにはいかん! だが、明日から水を多く使うおかゆをたかないと約束するなら、今夜だけは許してやろう」
「はい、これからは、決しておかゆをたきません。普通のごはんにします」
こうして和尚さんは、ようやく井戸の水を飲む事が出来ました。
あくる朝、小僧が和尚さんに尋ねました。
「和尚さま。今夜もおかゆをたきましょうか?」
すると和尚さんは、あわてて言いました。
「いや、いや、おかゆなんて、とんでもない! おかゆは、もうこりごりじゃ」
おしまい
|
|
|