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        4年生の江戸小話(えどこばなし) 
        
      その指がほしい 
      
        むかし、ある男が、仙人(せんにん)になった友人に会いに行きました。 
 色々な話をして、さて帰ろうとすると仙人が言いました。 
「どれ。お前に土産をやろう」 
 仙人はそう言うと、地面に落ちている豆粒ぐらいの小石に、 
「えいっ!」 
と、気合いを込めて指をさしました。 
 すると不思議な事に、小石は仙人の力で黄金になったのです。 
 そのピカピカと光り輝く黄金を仙人が男に渡そうとすると、男は首を横に振って言いました。 
「そんな物は、いらないよ」 
 それを聞いた仙人は、 
「ああそうか、もっと大きいのが欲しいのだな」 
と、今度はにぎりこぶしほどの石を指さして、これも金の塊に変えてしまったのです。 
「さあ、これでどうだ」 
 仙人が言うと、男はまた首を横に振って言います。 
「それも、欲しくないよ」 
 仙人は困ってしまって、男に尋ねました。 
「それではお前は、何が欲しいのだ?」 
 すると男はニッコリ笑って、仙人の指を指さしました。 
「どうせなら何でも金にする事が出来る、お前の指が欲しい」 
      おしまい         
         
        
       
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