|  |  | 5年生の江戸小話(えどこばなし)
 
 昼間のゆうれい   女房に死なれてから、ずっと一人暮らしの男がいました。ある日の事、男が昼飯を食べていると、おぜんの向こうに白い着物を着た青白い顔の女の人が、
 ♪ヒューッ、ドロドロドロー
 と、現れました。
 「ひゃー! 出たー! 幽霊だー! お助けをー! ・・・あれっ?」
 よく見てみると、それはずっと前に死んだ、男の女房ではありませんか。
 「かかあ・・・。おめえか? おめえだな! かかあよ、なんで今頃になって化けてきたんだ?」
 男が言いますと、女房の幽霊は目に涙を浮かべて言いました。
 「お前さん。・・・長い事、長い事、お前さんに会わないので、・・・会いたくて、会いたくて、つい、出てきました」
 「そうか、そいつはうれしいねえ。しかし、それにしたってお前もせっかちな女だな。幽霊なんだから、夜まで待てばいいじゃないか」
 すると女房の幽霊は、怖そうに身震いして言いました。
 「よっ、夜にだって。・・・おお、おそろしい。お前さん、あたしが恐がりなのを知っているだろ。もし夜に来て幽霊にでも出会ったら、どうするんだい」
 おしまい  
 
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