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11月7日の小話

くせ
   あるところに、何かというと、鼻をこするくせの男と、頭をポンポンとたたく、くせを持つ男がいました。
   ある日、このふたりがそうだんして、
  「今日から、くせをやめよう」
  と、きめて、それから、いろいろおしゃべりをはじめました。
   ふたりとも、つい手が鼻にいくのをとめたり、頭にいく手をおさえたりしていると、ひとりの男が、
  「なんと、このごろ、弓矢をひきにいったかい」
  と、ききました。
   すると、もうひとりの男が、
  「うん、いったいった。こうして、ぎゅうーっと、つるをしぼって」
  と、いって、弓のつるをしぼるふりをして、鼻をこすりました。
   もうひとりの男がこれをみて、ポンポンと頭をたたき、
  「それで、その矢がマトにあたれば、『ポン!』このような音が出るだろう」
 なかなか、くせというものはなおりませんね。
おしまい