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5年生の江戸小話(えどこばなし)
大事なお手本
ある町に、鬼瓦(おにがわら)を焼いている瓦職人が住んでいました。
この瓦職人の家からそれほど遠くないところに、一人の娘さんが住んでいました。
ところがこの娘さん、ちょっとした病気がもとでポックリ死んでしまったのです。
お葬式の日、瓦焼きの職人は娘さんの家にやってくると、人一倍悲しそうに泣き始めました。
娘さんの父親が、不思議に思ってたずねました。
「どこのお方かはぞんじませんが、どうしてそんなに悲しんでくださるのですか? もしや娘と、いい仲だったのでしょうか?」
すると瓦焼きの職人は、さもくやしそうに言いました。
「いいえ、実はわたしの大事な鬼瓦の手本が、今日からなくなってしまったもので」
おしまい
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