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4年生の日本民話(にほんみんわ)
死ぬのはこわい
青森県の民話(みんわ)
むかしむかし、陸奥の国(むつのくに→青森県)のある村に、万次郎(まんじろう)という、とても気のよわい男がいました。
村のだれかがなくなると、今度は自分かもしれないと、いつもビクビクしているのです。
ある日、万次郎(まんじろう)は、死んだおじいさんから聞いた話を思い出しました。
「一月十六日のま夜中に、人に見つからないように家の屋根にのぼれば、その年に死ぬ人の運命がわかる」
と、いう話しです。
(もしかして、自分の運命がわかるかもしれない)
死ぬのがこわくてたまらない万次郎(まんじろう)は、つぎの年の一月十六日、家のみんなが寝(ね)るのを待って、こっそり屋根へのぼりました。
「おおっ、さむい」
万次郎(まんじろう)は、ガタガタふるえながら、あちこちを見回しました。
どの家も明りがきえていて、物音一つ聞こえません。
と、そのとき、村の一本道を、ゆっくりとこっちへ近づいてくるものがあります。
白い着物を着て、ひたいに三角の白い紙をつけた死人です。
(ゆ、ゆうれい!)
万次郎(まんじろう)はビックリしましたが、でもよく見ると、それは近くの家にすむ老婆(ろうば)でした。
若者(わかもの)と一緒(いっしょ)に畑仕事をしたり、まごの世話をしたりと、元気な働き者(はたらきもの)として知られていました。
この前もあったばかりで、死んだなんて話しは聞いたことがありません。
万次郎(まんじろう)は不思議(ふしぎ)そうに、屋根の上から老婆(ろうば)を見ていました。
老婆(ろうば)はまるで、たましいのぬけたような顔で、トボトボと歩いていきます。
(いったい、どこへいくのだろう?)
万次郎(まんじろう)の家の前をとおりすぎた老婆(ろうば)は、やがて村はずれの墓場(はかば)の前へいき、そのままけむりのようにきえてしまいました。
(さてはあのおばあさん、今年死ぬのだろうか?)
万次郎(まんじろう)が首をひねっていると、こんどは近くの家から、おなじように死人の衣装(いしょう)をつけた娘(むすめ)が出てきました。
(あっ、あの娘(むすめ)は!)
万次郎(まんじろう)は、もう少しで声を出すところでした。
村でも評判(ひょうばん)の美しい娘(むすめ)でしたが、病気になってからは寝(ね)たきりといううわさです。
娘(むすめ)も、村はずれの墓場(はかば)の前で、けむりのようにきえてしまいました。
(はたして、あの二人は今年中に死ぬのだろうか?)
そう思うと、おそろしくて人に話すこともできません。
でも万次郎(まんじろう)の思った通り、まもなく老婆(ろうば)も娘(むすめ)も死んでしまいました。
万次郎(まんじろう)は、いよいよ死ぬのがこわくなりました。
それでも毎年、一月十六日がくると屋根にのぼって、今年はだれが死ぬかをたしかめるのでした。
さて、ある年のことです。
今年も一月十六日の夜に屋根にのぼって下を見ていたら、なんと、そこにあらわれたのは、死人の衣装(いしょう)をつけた自分でした。
(そっ、そんな、バカな!)
万次郎(まんじろう)はビックリして、息が止まりそうになりました。
もう一人の万次郎(まんじろう)は、屋根の上の万次郎(まんじろう)には目もくれず、ゆっくりゆっくりと墓場(はかば)のある方へ歩いていきます。
やがて墓場(はかば)の前にくると、けむりのようにきえてしまいました。
万次郎(まんじろう)は屋根からかけおりると、家の者をたたきおこしていいました。
「ああ、おらは死ぬ!」
家の者は、ビックリして、
「何をバカな事を。なにか悪い夢(ゆめ)でもみたのだろう」
「いいや、夢(ゆめ)じゃねえ! 実はな・・・」
と、今までの事をみんなにうちあけましたが、
「はん。そんな事、だれが信(しん)じるものか」
と、いって、だれもとりあってくれません。
それから万次郎(まんじろう)は、今(いま)まで以上(いじょう)にビクビクして暮(く)らし、その年の秋、突然(とつぜん)死んでしまったのです。
万次郎(まんじろう)の事は村のうわさになりましたが、だれもがこわがって、一月十六日の夜がきても、屋根にのぼる人はいなかったという事です。
おしまい
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