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1月19日の日本民話
  
  
  
  おらびの妖怪
  高知県の民話 → 高知県情報
 むかしむかし、土佐の国(とさのくに→高知県)の大きな山に、おらびという呼ばれる妖怪(ようかい)が住んでいました。
   おらびというのは土地の言葉で大声を出すという意味ですが、このおらびの妖怪は山道を通りかかる人を見つけては、
  「おらと、おらび比べをしろ!」
  と、言うのです。
   ことわっては何をされるかわからないので、多くの人はしかたなく、おらびとおらび比べをするのです。
   ところが、おらびの妖怪の声はとても大きく、ひとたびほえれば、山の木々が地震みたいにゆれるのです。
   とても、人間の勝てる相手ではありません。
   それとこまったことに、おらび比べに負けた人間は、必ずおらびに食べられてしまうのです。
   だから、この山に近づく者はめったにおらず、うわさを聞いた旅人は、わざわざ遠まわりをしてほかの山道を歩いていくのです。
   さて、この山の近くに、とても気の強い猟師が住んでいました。
   おらびの妖怪のおかげで仲間が山にも行けず、旅人もこまっていると聞いて、
  「よし。おらが、おらびの妖怪を退治(たいじ)してやる!」
  と、いって、たった一人で出かけていったのです。
   山道をどんどん進んでいきますが、どうしたことか、おらびの妖怪は出てきません。
  (そんなら、こっちから呼びかけてやる)
   猟師は山道の途中で立ちどまると、近くの森にむかってどなりました。
  「やい、おらび! おらとおらび比べをしないか!」
   すると、森の奥から、
  「する、する、するぞーっ! おらび比べをする」
  と、いって、おらびの妖怪が出てきたのです。
   牛よりも大きなウシガエルの妖怪で、のそり、のそりと近づきながら、大きな口をパクパクと開けるのです。
  (これが、おらびの妖怪か)
   猟師はビックリしましたが、鉄砲をかまえると、おらびの妖怪に言いました。
  「おらが先にいうか? それともお前が先にいうか?」
   すると、おらびの妖怪が、
  「おらが先にいうぞ」
  と、いって、大きな口をいっぱいに開けて、
  「うおーっ!!!」
  と、さけびました。
   とたんに、まわりの木がガタガタとゆれだし、猟師はもう少しで気絶(きぜつ)するところでした。
  (よし、いまのうちだ!)
   猟師はその大きな口をめがけて、
   ズドーン!
  と、鉄砲の玉を打ち込みました。
   どうやら、口の中が急所だったらしく、おらびの妖怪はそのまま死んでしまいました。
   猟師はさっそく村へもどって、おらびの正体が大きなウシガエルであったことと、それを退治したことを話しました。
 この猟師のおかげで、もう二度とおらびの妖怪は現れなかったという事です。
おしまい