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2月3日の日本民話

冗談のお願い

冗談のお願い
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 むかしむかし、あるところに、仏さまをいっしょうけんめいおがんでいるおばあさんがいました。
 おばあさんは、毎日のようにお寺にお参りして、
「ナムアミダブツ、ナムアミダブツ・・・」
と、おがんでいました。
 おばあさんは、もうすっかり年をとっていて、早く極楽(ごくらく→天国)からお迎えがこないか、そればかり考えていました。
「ナムアミダブツ、ナムアミダブツ、もう生きていてもしかたありません。仏さま、どうぞ一日も早く、わたしをお迎えにきてください」
 それを聞いていた、お寺の小僧(こぞう)さんは、
(あんなこと言ってるけど、本当に早く死にたいのかどうか。一つためしてやろう)
と、思いました。
 そこである日、仏壇(ぶつだん)のうしろにかくれて、おばあさんの来るのを待っていました。
 やがておばあさんがやってきて、いつものようにおがみます。
「ナムアミダブツ、ナムアミダブツ、早くわたしを楽にしてください」
 そのとたん、小僧さんが言いました。
「よしよし、そんなに言うのなら、明日、いよいよ迎えにきてやろう。極楽へいってゆっくりするがよい」
 さあ、それを聞いたおばあさんはビックリです。
「いえいえ、まだ、わたしは生きていとうございます。お迎えにくるのは、うーんとうーんと先にしてください」
 おばあさんはたたみにおでこをこすりつけると、何度も何度も頭をさげました。
「まだ死にたくないのなら、なぜそんな事を頼むのじゃ?」
「いえ、その、あれは、ほんの冗談(じょうだん)です。さっきのお願いはとりけしますから、どうぞ長生きさせてください」
 小僧さんはおかしくて、笑いたくなるのをジッとがまんしていました。
 さて、しばらく不思議そうに仏さまを見ていたおばあさんは、
「この仏さまは、なんてよくわかる仏さんだろう。これじゃ、うかうか、お参りもできないねえ」
と、言いながら、帰っていったという事です。

おしまい

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