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2月25日の日本民話
  
  
  
  よっぱらったスズメ
  長崎県の民話 → 長崎県情報
 むかしむかし、あるところに、お父さんと息子がいました。
   ある日の事、お父さんは息子に言いました。
  「となりの国ヘスズメを持っていけば高く売れるそうだが、一度にたくさんのスズメをとる方法はないものか?」
   すると息子は、
  「そんなことはわけもない。酒のカスとツバキの葉っぱがあればだいじょうぶだよ」
  と、言って、酒のカスを買いにいき、ツバキの葉っぱをかごにいっぱいつんできました。
   それからスズメのきそうなところに葉っぱを並べて、その上に、少しずつ酒のカスをつけておきました。
  「こうしておけば、スズメなんかすぐにつかまえられるよ」
   二人は木のかげにかくれて、スズメが来るのを待っていました。
   すると、チュンチュンチュンと、スズメたちが集まってきて、酒のカスを食べはじめました。
   ところがしばらくして、スズメたちは酒のカスによっぱらってしまい、ツバキの葉っぱの上へコロリと横になったまま、動かなくなりました。
  「なるほど、息子はたいしたものだ」
   お父さんが感心していると、日であったまったツバキの葉っぱが、クルリンとまがって、寝ているスズメをすっぽりと包みこんでしまったのです。
  「いまのうちだ!」
   息子は、ほうきで葉っぱをはきよせると、俵(たわら)の中に入れました。
  「さあ、これを売りに行けばいい」
   お父さんはさっそく、スズメの入った俵を舟につみ、となりの国へ売りにいきました。
  「さあさあ、よく太ったおいしいスズメだよ、買った買った」
   お父さんの声を聞いて、大勢の人が集まってきました。
  「まさか、死んでいるスズメじゃないだろうな」
  「とんでもない。ほれこの通り、ゴソゴソ動いていますよ」
  「本当だ。それなら売ってくれ」
  「はいはい。みんなきちんと並んでください」
   これほどスズメを買う人があるとは、お父さんも知りませんでした。
  (全部売ったら、どのくらいのお金になるだろうか)
  と、思うだけでうれしくなってきます。
   ところが俵の口を開けたとたん、スズメがいっせいにとび出して、あっというまに空へとんでいきました。
 よっぱらって寝ていたスズメは、すっかり目がさめてしまったのです。
おしまい