
  福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話 > 白いオオカミと温泉
4月7日の日本民話
  
  
  
  白いオオカミと温泉
  鳥取県の民話 → 鳥取県情報
 むかしむかし、都(みやこ→京都)での戦いにやぶれて逃げのびたある武将(ぶしょう)が、味方の力をふたたびもりかえすことを願って、その祈願(きがん)のために、はるばる鳥取の山奥にあるお寺をたずねていきました。
   けわしい山の中をお寺にむかっていると、むこうの林の中に白いオオカミがたたずんでいるのが見えました。
  「ほほう。白いオオカミとは、めずらしい」
   武将は足を止めると、弓に矢をつがえました。
   そして白いオオカミにねらいをさだめましたが、
  「・・・やめておこう」
  と、弓矢をしまいました。
   これからお寺へ祈願(きがん)にいくのに、殺生(せっしょう)してはならないと思いとどまったのです。
   武将は林の中にいる白いオオカミをしばらく見つめていましたが、やがてその場をはなれて、山奥のお寺へむかいました。
   それから、何日かたった夜ふけのことです。
   武将の夢の中に仏(ほとけ)さまが現れて、こんな事を言ったのです。
  「よく聞くがよい。そなたが白いオオカミに出会った林の中に、大きなクスノキの株がある。そこには万病にきく湯がわいておる。病に苦しむ人たちを、それで救うがよい」
   武将はさっそく、白いオオカミに出会った場所へ出かけていきました。
   そして林の奥へ歩いていくと、大きなクスノキの切り株のそばに湯がわきでていました。
   その湯の中には、足をケガしたあの白いオオカミが、ケガの治療に入っていたということです。
 これが有名な、三朝温泉(みあさおんせん)のはじまりだという事です。
おしまい