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4月19日の日本民話
  
  
  
  たからものをくれたお化け
  高知県の民話 → 高知県情報
 むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
   おじいさんは山へ木を切りに、おばあさんは川へせんたくに出かけます。
   ある日の事、おばあさんが川へ行くと、川上のほうからピカピカと金色に光る、大きなはこが流れてきました。
   おばあさんが、
  「こっちへこい、こっちへこい」
  と、呼んでみると、はこは一人でに岸のほうへ流れてきて、おばあさんの前で止まったのです。
  (ありがたや、ありがたや、きっと宝物が入っているにちがいない)
   おばあさんは大喜びではこをひろいあげて、家まで運びました。
  (さて、何が出てくるか?)
   ドキドキしながらはこのふたを開けてみると、なんと目玉が一つに口が二つのお化けが、ニューと顔を出したのです。
  「ヒェーーーッ!!」
   おばあさんはあわててふたをすると、物入れの部屋に放り込みました。
   ところがしばらくたつと、部屋の中からお化けが歌うように言うのです。
  ♪ここから出たい、チンチロリン
  ♪ここから出たい、チンチロリン
   お化けとは思えない、とてもかわいい声です。
   おばあさんはこわいのも忘れて、お化けをはこから出してやりました。
   するとお化けは、
  ♪げたをはきたい、チンチロリン
  ♪げたをはきたい、チンチロリン
  と、言いました。
  「げたをはきたきゃ、これでもはきな」
   おばあさんは、おじいさんの古いげたを出してやりました。
   げたをはいたお化けは、またも歌うように言いました。
  ♪クワを持ちたい、チンチロリン
  ♪クワを持ちたい、チンチロリン
  「そんなら、これを持っていけ」
   おばあさんは、古くなったクワを出してやりました。
   お化けはクワをかつぐと、
  ♪畑へ行きたい、チンチロリン
  ♪畑へ行きたい、チンチロリン
  と、言いました。
  「ほんとに、お前はおかしなお化けだよ」
   おばあさんは、お化けをうらの畑へつれていきました。
   お化けは畑に来ると、かたからクワをおろして言いました。
  ♪ここをほりたい、チンチロリン
  ♪ここをほりたい、チンチロリン
  「ほりたきゃ、ほってみな」
   おばあさんが言うと、お化けはよろこんで畑の土をほりはじめました。
   その早いこと、あっというまに深い穴をほりあげました。
  「こらこら、そんなに深くほっちゃだめだ」
   おばあさんが止めようとして穴をのぞいて見ると、穴の中から大きなつぼが出てきました。
  ♪大判小判がどっさり、チンチロリン
  ♪大判小判がどっさり、チンチロリン
   お化けはそう言うと、クワとげたをおいて山の方へ歩いていきました。
  「何! 大判小判とな!」
   おばあさんは穴に飛び込んで、つぼのふたをとりました。
   すると中には、金ぴかに輝く大判小判がギッシリとつまっていたのです。
   おばあさんは大喜びで、山に行っているおじいさんを呼びに行きました。
 村一番のお金持ちになったおじいさんとおばあさんは、死ぬまでしあわせにくらしたという事です。
おしまい