
  福娘童話集 > きょうの日本民話 > 5月の日本民話 > ならず者と白いヘビ
5月8日の日本民話
  
  
  
  ならず者と白いヘビ
  千葉県の民話 → 千葉県情報
 むかしむかし、ある小さな里に、長さが一メートルほどの白いヘビが二匹でてきました。
   二匹の白いヘビは人をおそれるようなことも、人に悪さをするようなこともありませんでした。
   二匹は毎日のように、仲よく里の中をはいずっていました。
  「このヘビたちは、つがい(→夫婦)かのう。とても仲がよい。二匹ともまっ白とは、ほんにめずらしい」
  「白いヘビは神さまの使いだというぞ。それが一度に二匹も現れたんじゃ。この里に何かいいことがあるかもしれんな」
   里の人たちは、とつぜん現れた白いヘビを、そっとしておいてやりました。
   ところがこの里には、八郎次(はちろうじ)というならず者がいました。
   自分には何もこわいものはないと、いつも強がりをいっています。
   八郎次は白いヘビの話を耳にすると、みんなの見ている前で二匹のヘビをつかみあげて、たたき殺してしまったのです。
  「ヘビが何をしたというんじゃ! 何もせんのに、殺すことはなかろう」
   お百姓(ひゃくしょう)の一人がいうと、
  「ふん! 殺すのはかってだろう。目玉の赤い白いヘビなど、気持ちわるくてしょうがねえ」
  「白いヘビはな、神さまのつかいだ。たたりがあったらどうする!」
  「なにがたたりじゃ。そんなもんはこわくない」
   朝から酔っぱらっている八郎次は、そのまま家に帰っていきました。
   その夜の事です。
   八郎次の顔は、まるで皮をむいたトウガン(ウリの一種)のように、まっ白にふくれあがってしまったのです。
   顔ばかりではありません。
   手も足も、体中が白くなってふくれあがり、はげしい痛みにおそわれたのです。
   八郎次は家から飛び出すと、
  「痛え! 痛えよう! 助けてくれー!」
  と、さけびながら、里じゅうを走りまわりました。
   そして三日三晩苦しみぬいて、やぶの中で死んでしまいました。
おしまい