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5月23日の日本民話
  
  
  
  お月さまに行ったウサギ
  青森県の民話 → 青森県情報
 むかしむかし、サルとキツネとウサギが、神さまのところへ行きました。
  「神さま、どうかおねがいです。こんど生まれてくる時は人間にしてください」
   すると、神さまが言いました。
  「人間に生まれてきたいなら、自分の食べ物を人間にごちそうすることだ」
   そこでサルは山へ行き、クリやカキの実をとってきました。
   キツネは川へ行って、魚をつかまえてきました。
   ところがウサギの食べ物は、やわらかい草です。
   今は冬なので、やわらかい草は一本もありません。
  (こまったなあ。どうしよう?)
   ウサギはガッカリして、サルとキツネのいるところへもどってきました。
  「ウサギさん、きみのごちそうはどうしたの?」
  「だめだよ。草はかれているし、木のめは、まだ出ていないんだ」
   すると、サルが言いました。
  「それじゃ、ウサギさんはいつまでも、ウサギのままでいるんだな」
  「ごちそうも持ってこないで人間に生まれかわりたいなんて、ウサギさんはずるいよ」
   キツネも、おこって言いました。
  「ごめん。でも、もう一日だけ待って」
   次の日、ウサギは山へ行くと、かれ木をひろい集めてきました。
   そしてサルとキツネの前に、かれ木をつみあげて言いました。
  「今からごちそうをやくから、火をつけておくれ」
   サルとキツネが火をつけると、かれ木はパッともえあがりました。
  「ぼくのごちそうはないんだ。だから、ぼくを人間に食べさせておくれ」
  と、言うなり、ウサギは火の中に飛び込んだのです。
   その時、空の上から神さまがおりてきて、さっとウサギをだきかかえると、また空へのぼっていきました。
   サルもキツネも、ビックリ。
   すると、神さまが言いました。
  「サルもキツネも、きっと人間に生まれかわれるだろう。なにしろ、自分のたいせつな食べ物を人間にごちそうしようとしたからだ。でもウサギは、もっとすばらしい。自分をすててまで、人に食べさせようとしたんだからね。ウサギをお月さまの国で、いつまでもしあわせにしてあげよう」
   神さまにだきかかえられて、ウサギは空高くのぼっていきました。
   そのときからウサギは、お月さまのなかで楽しくくらしているという事です。
おしまい