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6月22日の日本民話

大火事を知らせた男

大火事を知らせた男
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 むかしむかし、ある町で、お金をとって碁(ご)をうたせる碁会所(ごかいしょ)をやっている老人がいました。
 この碁会所に、山のむこうの関ヶ原(せきがはら)にすむ男がやってきました。
 碁をおえると、男がいそいで帰ろうとするので、老人が、
「関ヶ原までは、十五里(約六十キロメートル)もある。いまからでは、とても今日中には帰れないぞ。一晩ここに泊まって、あしたの朝早く帰ったらどうだ?」
と、いいました。
 ところが男は、
「いやいや、そうもしておられん。なにしろ今月中に、関ヶ原で大火事があるんですわ。今夜かもしれんし、明日かもしれん。いやいや、もうすでに燃えているかもしれんのです。ですから、一刻も早く帰らなければならないのです」
と、いうのです。
 老人をはじめ、碁を打っている人たちは、おたがいに顔を見あわせました。
「ほほう。今月中に大火事があると。そんなことが、どうしてわかるのですか?」
 碁会所のお客さんの一人が、たずねました。
「それは三年前のこと。村の若い男が山へ木を切りにいって、そのまま行方知れずになってしまったんですわ。いくらさがしても、何一つ手がかりになるものは見つかりませんでしたが、ある日、山へ入った者が行方知れずの男とバッタリと出会ったのです。そして『これはおどろいた。お前、まさか幽霊(ゆうれい)ではあるまいな。みんな心配してさがしておったんだ。どこで何をしておった?』と、たずねると、男はこんな事をいったのです。『おら、いまテングにつかえてくらしておる。テングはな、おらを人間界に帰してくれんのじゃ。何年あとかはいわぬが、二月の月のうちに関ヶ原に大火事がおこって焼けてしまう。あんただけに知らせておくから、よくよく心得ておけよ』と、それで毎年二月になると、わしらは火の心配をしておるんじゃ」
 そういうと関ヶ原から来た男は、あわただしく帰っていきました。
 そして、二月の最後の日の夕方のことです。
「あの男がいったことなど信じてはおらなんだが、二月も今日で終わりじゃ。やっぱり何もおこらんかったな」
 碁会所の前に立って、老人が西の山に沈む夕日をながめていたときです。
 山をこえた関ヶ原の西のはしにある家から火がでて、はげしくふく西風にあおられて燃えひろがりました。
 そして、たった一夜のうちに、関ヶ原のほとんどの家が灰になってしまったという事です。

おしまい

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