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4年生の日本民話(にほんみんわ)
キツネの毒(どく)キノコ
青森県の民話(みんわ)
むかしむかし、山のふもとのある村に、娘(むすめ)が一人いる、おじいさんとおばあさんがいました。
娘(むすめ)のお春(はる)はとても美人で、おじいさんはむこさん選(えら)びがたいへんです。
ある日の事、とてもいい話がまいこんできたので、娘(むすめ)の嫁入(よめい)りが決まりました。
おじいさんは喜(よろこ)んで、嫁入(よめい)り道具を買いに町へでかけていきました。
峠(とうげ)の道をのぼっていくと、林の中にキツネが集まって、たのしそうに歌いながらおどっています。
立ちどまって見ていると、キツネたちは、
♪美人のお春
♪嫁(よめ)にもらって
♪楽しみだ
♪早くこねえかな
と、歌っているのです。
それを聞いたおじいさんは、ビックリ。
「キツネたちめ、よくもだましよったな!」
おじいさんはいそいで家にもどると、おばあさんに話をしました。
それを聞いたおばあさんも、すっかり腹(はら)をたてて、
「じいさま。キツネに豆酒(まめざけ)のませると、動けなくなるといいます。キツネたちが嫁(よめ)をもらいにきたら、のましてやりましょう」
と、いって、さっそく豆酒をつくりました。
さて約束(やくそく)の日になると、嫁(よめ)むかえのキツネたちは男前(おとこまえ)の若者(わかもの)に化けて、ウマまでひきつれてやってきました。
おじいさんは、
「やあやあ、遠いところをごくろうさんです。まだ娘(むすめ)の準備(じゅんび)が終わっていないので、しばらく休んでくだされや」
と、あいさつをして、豆酒をのませました。
ウマには、豆酒のしぼりかすの煮豆(にまめ)をあたえました。
いい気持ちになって横になった男たちは、いびきをかきはじめ、そしていつのまにやら、しっぽを出したり、とがった耳を出したりと、キツネの正体をあらわしはじめたのです。
「それっ、やってしまえ!」
おじいさんとおばあさんは、ねむっているキツネたちを手あたりしだいになぐりつけました。
そして家の裏(うら)につないだウマたちも、キツネの正体をあらわしていたので、これも次々にたたきのめしてしまいました。
そのとき、一匹(1ぴき)のキツネが息をふきかえして、逃げ出(にげだ)しました。
おじいさんがあとをつけていくと、キツネは山の巣穴(すあな)へ逃(に)げこんで、留守番(るすばん)をしていた古ギツネに言いました。
「みんな、殺(ころ)されてしもうたんじゃ。おら、かたきうちをする。じじいの家の庭の木の下に生える毒(どく)キノコに化けて、娘(むすめ)のお春も一緒(いっしょ)に、みな殺(ごろ)しにしてやるわ」
それをきいた、留守番(るすばん)の古ギツネは、
「毒(どく)キノコに化けるというが、人間はかしこいからな。毒(どく)キノコの毒(どく)は、イワシの煮干(にぼ)しを入れて煮(に)たら、消えてしまうのを、知ってるかもしれんぞ」
と、いいましたが、若(わか)いキツネはききません。
(そうか、毒(どく)キノコの毒(どく)は、イワシの煮干(にぼ)しをいれて煮(に)たら消えてしまうのか)
話をきいたおじいさんは、喜(よろこ)んで家に帰っていきました。
庭でまっていると、やがて大きなキノコが生えてきました。
おじいさんはそのキノコをとって、イワシの煮干(にぼ)しを入れて煮(に)てみると、キツネが化けたキノコの毒(どく)が消えて、とてもおいしいキノコ汁(じる)になったのです。
おじいさんとおばあさんは近所の人たちをよんで、キツネのキノコ汁(じる)で、たのしい宴会(えんかい)をひらいたという事です。
※ イワシの煮干(にぼ)しで毒(どく)が消えるのは、キツネが化けたキノコの毒(どく)だけで、本当の毒(どく)キノコの毒(どく)は、イワシの煮干(にぼ)しを入れても消えません。
おしまい
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