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2年生の日本民話(にほんみんわ)
にげだしたすもうとり
兵庫県(ひょうごけん)の民話(みんわ)
むかしむかし、あるところに、とても力持(ちからも)ちのおじいさんがいました。
お寺(てら)のつりがねを、一人で持(も)ちあげたり、米(こめ)だわらを何(なん)びょうも、かついで歩(ある)く事(こと)ができました。
それに、すもうがたいへん強(つよ)く、村の若者(わかもの)たちが一度(いちど)に五人でとびかかっても、たちまち投(な)げとばされてしまいます。
ある時(とき)、このおじいさんのうわさを聞(き)いて、本物(ほんもの)のすもうとりがやって来(き)ました。
「この村に、すもうの強(つよ)い、じいさんがおるそうじゃが」
すもうとりは、田んぼでウシをつかっていた、おじいさんにたずねました。
「はい、まだ、だれにも負(ま)けた事(こと)のない、じいさんがいますよ」
「なに、だれにも負(ま)けた事(こと)がないだと。じいさんのくせして、なまいきだ。わしがひねりつぶしてやる」
すもうとりは、太(ふと)いうでをブンブンとふりまわしました。
「ところでじいさん、そのじいさんの家(いえ)はどこだ?」
「はい、はい。今(いま)、教(おし)えてあげますから、ちょっと待(ま)ってくださいよ」
おじいさんは、ウシの後(うし)ろについている、大きな土ほり道具(どうぐ)をはずしました。
そして、いきなりウシをかつぎあげると、ヒョイと田んぼの外(そと)へ出したのです。
すもうとりは、ビックリです。
それからおじいさんは、一人ではとても持(も)ちあげられない、土ほり道具(どうぐ)を片手(かたて)でつかむと、まるでぼう切(ぎ)れみたいにふって言(い)いました。
「ほれ、あそこに木が、三本見えるでしょ。その横(よこ)に立っている、わら屋根(やね)がじいさんの家(いえ)です」
それを見て、すもうとりはきゅうにこわくなりました。
「そ、そのじいさん、そんなにすもうが強(つよ)いのか」
「さあ、いくら強(つよ)いと言(い)っても、本物(ほんもの)のすもうとりに勝(か)てるかどうか、やってみなくちゃ、わかりませんよ」
すもうとりは、すっかり弱気(よわき)になって、
「で、でも、じいさんは家(いえ)にいるかな。せっかく行(い)っても、いないとガッカリするから、また来(く)ることにするよ」
するとおじいさんは、ニッコリ笑(わら)って、
「だいじょうぶ。そのじいさんなら、ここにいますよ」
と、自分(じぶん)の顔(かお)を指(ゆび)さしました。
そのとたん、すもうとりはふるえだして、あわてて逃(に)げていったという事(こと)です。
おしまい
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