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3年生の日本民話(にほんみんわ)
虫歯(むしば)の治療(ちりょう)
島根県(しまねけん)の民話(みんわ)
むかしむかし、あるところに、虫歯(むしば)を抜(ぬ)く名人がいました。
そのころは、歯医者(はいしゃ)さんがいなかったので、虫歯(むしば)がいたくなると名人のところへ行って、クギをぬくクギぬきでぬいてもらったのです。
虫歯(むしば)をクギぬきでぬくのはとても痛(いた)いのですが、でもこの名人にぬいてもらうと、ちっとも痛(いた)くないというので、大変(たいへん)な評判(ひょうばん)でした。
さて、名人の家の近くに、自分の舌(した)を出すのも、もったいないというぐらいの、ひどいけちんぼうがいました。
このけちんぼうも虫歯(むしば)になりましたが、ちりょうのお金を出すのがいやなので、ずっとがまんしていました。
でも、とうとうがまんできずに、名人のところへやって来たのです。
「虫歯(むしば)をぬいてほしいのじゃが、虫歯(むしば)を一本、いくらでぬいてくれる?」
「はいはい。一本ぬくのは、二文(→一文は30円ほど)です」
「何? 一本ぬくのに、二文もとるのか?」
「はいそうです。二本で四文、三本で六文」
「そりゃ、高すぎる。一本一文にまけろ」
この名人は、とてもいい人だったので、お金がなくてこまっている人の虫歯(むしば)は、ただでぬいてやるのです。
でもこの男は、本当は大変(たいへん)な大金持(おおがねも)ちなのです。
「まけることはできません。いやなら、帰ってください」
「うむ、そういわれてもな・・・」
しばらく考えていましたが、けちんぼうが言いました。
「それなら、この歯(は)と一緒(いっしょ)に、もう一本ぬいて二文にまけてくれ」
二本で二文なら、一本で一文ということになります。
(やれやれ、なんてあきれたけちんぼうだ)
名人はバカらしくなり、すぐに虫歯(むしば)をぬいてやりました。
「さあ、虫歯(むしば)はぬきましたよ。二文をおいて、もう帰ってください」
「まてまて、二文で二本の歯(は)をぬく約束(やくそく)だ。もう一本ぬいてくれ」
「でも、もう虫歯(むしば)はありませんよ」
「いいから早くしろ、もう一本ぬいてもらわないと損(そん)をする」
「・・・はいはい」
名人はもう一本、虫歯(むしば)でない、丈夫(じょうぶ)な歯(は)をぬいてやりました。
「いててて!」
丈夫(じょうぶ)な歯(は)をぬいたので、とても痛(いた)かったのですが、それでもけちんぼうは、口をおさえながら、
(よしよし。これで一文もうけたぞ)
と、よろこんで帰って行ったという事(こと)です。
おしまい
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