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2年生の日本民話(にほんみんわ)
若(わか)い男に化(ば)けた鬼(おに)
富山県(とやまけん)の民話(みんわ)
むかしむかし、越中の国(えっちゅうのくに→富山県(とやまけん))に、一軒(1けん)の鍛治屋(かじや)がありました。
鍛冶屋(かじや)といっても、大勢(おおぜい)の職人(しょくにん)を使(つか)う金持(かねも)ちで、長者(ちょうじゃ)のような屋敷(やしき)に住(す)んでいます。
この鍛冶屋(かじや)に、かわいい一人娘(ひとりむすめ)がいて、そろそろむこをもらう年頃(としごろ)になりました。
そこで鍛冶屋(かじや)は、職人(しょくにん)たちに、
「一夜(いちや)のうちに、千本の槍(やり)をつくれる者(もの)を、むこにする」
と、いったのです。
しかし、いくら腕(うで)のいい職人(しょくにん)でも、一夜(いちや)に千本の槍(やり)をつくることはできません。
鍛冶屋(かじや)はしかたなく、その事(こと)を立て札(たてふだ)にして、すごい腕(うで)の職人(しょくにん)が現(あらわ)れるのを待(ま)ちました。
さて、この立て札(たてふだ)を見て喜(よろこ)んだのは、近(ちか)くの山に住(す)む鬼(おに)です。
(グワハハハハ。千本の槍(やり)なんて、わけもない)
と、さっそく若(わか)い人間(にんげん)の男に化(ば)けて、屋敷(やしき)にやってきました。
「本当(ほんとう)に、千本の槍(やり)ができるのか?」
「できます。一番(1ばん)どりが鳴(な)くまでには、かならずつくってみせます」
鬼(おに)が化(ば)けた若(わか)い男は、きっぱりといいました。
「よし、それならつくってみろ」
日がくれると同時(どうじ)に、若(わか)い男は仕事場(しごとば)に入り、槍(やり)づくりを始(はじ)めました。
だけど、仕事場(しごとば)からは、ときおり風(かぜ)の吹(ふ)くような音が聞(き)こえるだけで、鉄(てつ)を打(う)つ音が聞(き)こえてきません。
「はて。いったいなにをしているのだ?」
不思議(ふしぎ)に思(おも)った鍛冶屋(かじや)が、こっそり仕事場(しごとば)をのぞいてみると、なんと若(わか)い男は、口から炎(ほのお)をはいて、まっ赤になった鉄(てつ)を、まるでアメのように曲(ま)げているではありませんか。
槍(やり)はたちまちのうちにできあがり、どんどん積(つ)みあげられていきました。
この調子(ちょうし)では、夜明(よあ)けを待(ま)たなくても、千本になってしまいます。
鍛冶屋(かじや)は恐(おそ)ろしくなって、なんとか仕事(しごと)をやめさせる手はないものかと、考(かんが)えました。
(こうなったら、槍(やり)が千本できあがる前(まえ)に、一番(1ばん)どりを鳴(な)かせることだ)
鍛冶屋(かじや)は熱湯(ねっとう)をつぼに入れて、ニワトリ小屋(ごや)にしのびこみました。
どのニワトリも、まだ眠(ねむ)ったままです。
(どうか、一匹(1ぴき)でも、鳴(な)いてくれますように)
鍛冶屋(かじや)は、いのる気持(きも)ちで、ニワトリのとまり木に熱湯(ねっとう)を流(なが)しました。
そのとたん、ニワトリたちは驚(おどろ)いて、とまり木を飛(と)びおりた一羽(1わ)のオンドリが、
「コケコッコー!」
と、鳴(な)いたのです。
それを聞(き)いて、若(わか)い男に化(ば)けていた鬼(おに)はビックリです。
(さては、正体(しょうたい)がばれたか。あと一本だったのに)
若(わか)い男はたちまち鬼(おに)の姿(すがた)にもどると、そのまま外(そと)へと逃げ出(にげだ)しました。
それを見た鍛冶屋(かじや)は、ホッと胸(むね)をなで下ろしました。
「やはり鬼(おに)であったか。・・うん? おおっ、これは!」
鬼(おに)が逃げ出(にげだ)した後(あと)には、九百九十九本の槍(やり)が残(のこ)されており、どの槍(やり)もすばらしいできばえだったのです。
その後(ご)、その槍(やり)は鬼(おに)の槍(やり)として評判(ひょうばん)になり、鍛冶屋(かじや)はますますさかえたという事(こと)です。
おしまい
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