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10月9日の日本民話
  
  
  
殿さまとタイの塩焼き
岡山県の民話 → 岡山県情報
 むかしむかし、とてもいばっている殿さまがいました。
   そのくせ、自分では何も出来ずに、何がどうなっているのかわかりません。
   さて、この殿さまはタイの塩焼きが大好物で、ほかにたくさんのごちそうがあっても、必ずタイの塩焼きをつけないと機嫌が悪くなるのでした。
   でも、大好きといっても、ほんの二、三口はしをつけるだけで、ほとんど残してしまいます。
   ところがある日の事、殿さまはタイの表側を食べおわるとけらいに言いました。
  「今日のタイはとてもおいしいぞ。すぐにかわりを持ってこい」
   さあ、おどろいたのはけらいたちです。
   突然そんなことを言われても、用意なんかしてありません。
   かといって、これから用意するとなると、とても時間がかかります。
  「はあ、その、あの・・・」
   どういっていいかわからず、けらいたちがおろおろしていると、一人のけらいが、
  「かしこまりました。すぐにお持ちいたします」
  と、言って、タイの乗っているさらを持ってろうかへ出るなり、すばやくタイをひっくりかえしました。
   そしてそのまま、部屋にもどって殿さまのおぜんにおき、
  「おかわりを持ってきました」
  と、言ったのです。
  「うむ。早かったな」
   何も知らない殿さまは、これを新しいタイだと思って、二口、三口はしをつけると、
  「よいよい。このタイは、さっきよりもおいしいぞ」
と、言って、ニッコリ笑ったという事です。
おしまい