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10月22日の日本民話
愛犬が知らせた山くずれ
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むかしむかし、茶臼山(ちゃうすやま→愛知県東三河)のふもとの村に、日原喜兵衛(ひのはらきへえ)という侍(さむらい)がすんでいました。
喜兵衛(きへい)はある時、家の近くの川原でないていた子イヌをひろってきて、シロと名づけて家でかっていました。
シロは子どものいない喜兵衛夫婦にかわいがられて、大きくなっていきました。
喜兵衛が侍屋敷に何日かとまって、仕事をしていたある夜のことです。
留守を守っている奥さんの夢に、白い衣をまとった、神々しいばかりの若者が現れていいました。
「裏の茶臼山がさけて、このあたりは泥水でうまってしまいます。早くここを立ち退きなさい。わたしはあなたがたに恩をうけている者ですから、申しあげます」
目をさました喜兵衛の奥さんが、おかしな夢をみたものだと思っていると、あわただしく夫の喜兵衛がもどってきました。
「おい、シロはどうした? なにかあったか?」
あらい息をはきながら、いきなりイヌのシロのことを口にしました。
「シロが、どうかしましたか?」
たずねかえす奥さんに、喜兵衛はこんなことをいいだしたのです。
「昨日の夜の事じゃ。お屋敷の外でイヌがしきりにほえるので、どこのイヌがほえておるのかと思って外へ出てみると、これがなんとシロではないか。シロをお屋敷へつれていったことなど一度もない。よくわかったものだと思っておると、わしの服のすそをくわえて、家の方へひっぱるんじゃ。さては家で何かあったなと、いそいでもどってきたんだが」
喜兵衛の話をきいていた奥さんは、おどろいて、
「そういえば、さっきわたしも」
と、夢の話をしました。
白いイヌは神さまのつかいと言いますが、喜兵衛は、まさか自分の家で飼っているシロが神のつかいなどとは思えません。
でも次の日、喜兵衛夫婦はとなり近所をはじめ、村の家々をまわって夢のお告げをつたえました。
ですが、ただの一軒も話をまともにうけとってはくれません。
となり村へのがれていったのは、喜兵衛夫婦だけでした。
喜兵衛夫婦が村をはなれたちょうど一日後、とつぜん茶臼山がくずれたのです。
川は土砂であふれて、あふれた土砂は喜兵衛の家やとなり近所の家など、八十五軒もの家々をおしつぶして、四十人もの人たちが亡くなってしまったのです。
そしてイヌのシロは、喜兵衛夫婦に山くずれを知らせた夜から、どこかに姿を消したまま二度と現れなかったという事です。
おしまい