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10月27日の日本民話
洪水から村をすくった若者
宮崎県の民話 → 宮崎県情報
むかしむかし、ある村に、大きな池がありました。
この池には、全身がまっ白な大蛇(だいじゃ)と、全身がまっ黒な大蛇がすんでいました。
村の人たちから池の主とあがめられていた二匹の大蛇は、とてもおとなしくて、村人には何の悪さもしません。
いつも仲よく頭をならべて池を泳いだり、池のほとりで寄りそって、畑仕事をしている村の人たちを見ているのでした。
ところがある時、この大蛇があいついで死んでしまったのです。
それからというもの、雨がふると池の水があふれだして、村の家や田畑をおし流すようになりました。
「大蛇たちがおったときは、いくら大雨がふっても池の水があふれることはなかったのに」
村の人たちはみんなで力をあわせて、池のまわりにじょうぶな土手(どて)をつくりましたが、大雨がふると土手が切れて、村はたちまち水びたしになってしまいました。
土手は何度なおしても、大雨がふるとこわれてしまい、村は水びたしです。
そこで都からえらい占い師をまねいて、どうしたらいいかを占ってもらいました。
すると占い師は、
「白い大蛇と黒い大蛇が、村人のためにずっとこの池を守ってきたのに、死んでからは、だれもその事に感謝しない。大蛇の霊(れい)は怒っておるぞ。明日の朝、池のほとりを通る薄緑色の着物を着た若者を一人いけにえとしてさしだせば、大蛇の霊もいかりをおさめて、池から水が出ることはなくなるだろう」
と、いうのでした。
とは言っても、だれだって、いけにえにされたくはありません。
村の若者たちは占い師の話をきいて、明日は家から出ないようにしようと思いました。
ところが次の日の朝、夜明けとともに、池の土手の上に現れた若者がいたのです。
それは長千代丸(ながちよまる)という、村の酒屋の三番目の息子でした。
長千代丸は占い師の言っていた、薄緑色の着物を着ていました。
そして土手の上で正座(せいざ)をすると、池のむこうからのぼってくるお日さまをみつめながら、自分のお腹に刃物をつきさして、命をたってしまったのです。
長千代丸は村人たちのしあわせを願って、みずからいけにえになったのです。
それからは、池の水があふれ出る事はなくなりました。
そして田畑もよく実る、すばらしい村になったのです。
みずからいけにえとなった長千代丸のお墓は池のほとりにたてられて、いつも美しい花がそなえられていたという事です。
おしまい