
  福娘童話集 > きょうの日本民話 > 12月の日本民話 > ぐつとカラス
12月16日の日本民話
  
  
  
  ぐつとカラス
  長野県の民話 → 長野県情報
 むかしむかし、ある村に、ぐつという名の男の子がいました。
   ある日、おばあさんがぐつにいいました。
  「今日はな、じいちゃんの命日(めいにち)だで、お坊さんにお経をあげてもらうんだ。ぐつや、となり村まで行ってお坊さんをよんできとくれ」
  「お坊さんって、どんなの?」
   この村にはお寺がなかったので、小さいぐつはお坊さんがわかりません。
  「そうさな、お坊さんは、黒い着物をきていなさる」
  「ふーん、黒いきものか」
   ぐつはすぐに、出かけていきました。
   そして田んぼまでいったら、かかしにカラスがとまっています。
   見てみると、カラスはみんな黒い色をしています。
  「あっ、あれだな、あれがお坊さんだ。おーい、お坊さーん、うちへきとくれよ」
   ぐつが大声でよぶと、カラスはビックリしてどこかへ飛んでいってしまいました。
   せっかく見つけたお坊さんに逃げられてはならないと、ぐつがカラスを追いかけると、カラスはとなり村のお寺の森へいって、どこかにかくれてしまいました。
   追いかけてきたぐつが、
  「お坊さん、出て来い」
  と、呼んだら、お寺の本堂から本物のお坊さんが出てきて、
  「お坊さんはわしじゃが、なんの用かな?」
  と、ぐつにたずねました。
  「ああ、お坊さんて、人間だったのか」
   ぐつはビックリしましたが、なんとかお坊さんにわけを言って、家に一緒に来てもらいました。
 いつもはぐつをしかってばかりのおばあさんですが、今度ばかりは「いい子だ」とほめてくれたのです。
おしまい