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3年生の世界昔話(せかいむかしばなし)
頭のいいコヨーテ
アメリカの昔話(むかしばなし) → アメリカのせつめい
むかしむかしのある日、ヘビが岩にはさまれて、動(うご)けなくなりました。
そこへ、アヒルがやってきました。
「アヒルさん、おねがいです。この岩をおしてください」
と、ヘビがたのみました。
「ええ、おやすいご用ですとも」
アヒルはじょうぶな胸(むね)で、岩を動(うご)かしました。
すきまができると、ヘビは岩からぬけだして、アヒルの前にたちふさがりました。
「ながいこと、はさまれていたので、腹(はら)ぺこになっちまった。おまえさんを、ちょうだいするぜ」
こういってヘビは、まっ赤な長い舌(した)をだして、ペロペロと舌(した)なめずりをはじめました。
アヒルは足がすくんで、動(うご)けなくなりました。
それでもやっと、勇気(ゆうき)をだしていいました。
「いくらなんでも、そんなひどいことを、しちゃいけません」
「どうして、ひどいことなんだ?」
と、ヘビが聞きました。
「だってわたしは、あなたをたすけてあげたんですよ。お礼(れい)をくれるのが、ふつうじゃありませんか」
「おや? おまえさんは、知らないのかい。いいことをすると、わるいむくいがあるっていうじゃないか」
「そんなの、はじめて聞きましたよ。それじゃ、わたしのいうことと、あなたのいうことと、どっちが正しいか、だれかにきめてもらいましょう」
と、アヒルがいいました。
「ああ、いいとも。だれだって、おれのいうほうが、ほんとうだっていうよ」
そこでアヒルとヘビは、いっしょに歩いていきました。
やがて、ロバにであいました。
「ちょうどいい。さあ、聞いてみるんだな。いいことをすると、わるいむくいがあるかどうか」
ヘビにこういわれて、アヒルはロバにたずねました。
するとロバは、
「うん、そのとおりだよ。いいことをすると、わるいむくいがあるとも。わたしは人間のところで、おなかがすいていても、よく働(はたら)いた。暑(あつ)い夏も寒(さむ)い冬も、もんくをいわずにきちんとしごとをした。ところがどうだ。いまはこのとおり、すっかりよわってしまい、背中(せなか)がいたくてしょうがないんだ。すると主人(しゅじん)は、わたしをうえ死(じ)にさせようというんだからなあ。いいことをしても、お礼(れい)はいわれないよ」
と、いいました。
アヒルは、ビックリしましたが、
「ひとりのいうことだけでは、あてになりませんからね。もうひとりに聞いてみましょう」
と、いいました。
「ああ、いいとも、だれにでも聞くがいいさ」
しばらくいくと、こんどはウシにあいました。
「ウシさんに聞いてごらん。いいことをすると、わるいむくいがあるかどうか」
アヒルがたずねると、ウシはいいました。
「わたしを見てごらん。なん年もなん年も、主人(しゅじん)のために働(はたら)いた。どんなにくたびれてもがまんして、いっしょうけんめい働(はたら)いてきた。ところがわたしは、年をとって力がなくなってしまった。そうすると、どうだ。主人(しゅじん)はこんどは、わたしに草をたべさせてばかりいるんだ。自由(じゆう)にしてくれたのかと思えば、それが大ちがい。ふとらせて、肉屋(にくや)ヘ売ろうというんだからねえ。よいことをすると、わるいむくいがある。これはほんとうだよ」
またまた、ヘビの味方(みかた)です。
「いいえ。ロバもウシも、人間につかわれていたから、同じようなことをいうんですよ。こんどは、人間に飼(か)われていないなかまに、聞いてみましょう。そうだ、あっちからコヨーテがやってくる。コヨーテに聞いてみましょう」
すると、ヘビは、
「はん。コヨーテが、おまえさんのためになることを、いってくれるとでも思っているのかね?」
と、鼻(はな)で笑(わら)いました。
さて、コヨーテが近づくと、ヘビはアヒルの話をして、どう思うかと聞きました。
コヨーテは、しばらく考えていましたが、やがて、
「まず、アヒルさんがたすけたとき、ヘビさんはどこでどんなかっこうをしていたのかねえ。じっさいに見ないと、なんともいえないな」
と、いいました。
アヒルは、少しホッとしました。
ヘビは、
「ああ、いいとも」
と、いって、もとの岩のところにもどりました。
「さあ、ヘビさん、横(よこ)になりたまえ。アヒルさんが岩をどけるとき、ヘビさんはどんなかっこうをしていたんですか?」
と、コヨーテがいいました。
ヘビがからだをのばすと、コヨーテは大いそぎで岩をころがして、ヘビの頭をおさえつけてしまいました。
「こう、なってたのかい?」
「うん、そうそう。このように、岩で動(うご)けなかったんだ」
と、ヘビがこたえました。
すると、コヨーテがいいました。
「じゃ、ここにこうしておいで。よいことをするとわるいむくいがあるって、いってたね。じゃ、わるいことをしたらどうなるか、これで、わかったろう」
おしまい
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