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4年生の世界昔話
ライオンのメガネ
ヴィルドラックの童話
むかしむかし、とおいとおいところに、動物の国があり、その国の王さまはライオンでした。
そのライオンは、たくさん年をとったおじいさんですが、まだまだりっぱに動物の国をおさめていました。
「みなの者、弱い者いじめをしてはならないぞ。自分より弱い者、小さい者をいじめた者は死刑(しけい)にする」
ライオンの王さまはそう決めて、動物の国でも小さくて弱い者の、ウサギやヒツジをまもってやりました。
りっぱでやさしい王さまを、動物たちはみんな大好(だいす)きでした。
ところが近ごろ、ライオンは目が見えなくなってきたのです。
だれでも年をとると、目がかすんできますが、それはライオンも同じで、あたりがボーッと見えて、うまく走ることができなくなってしまいました。
それを見て大喜(おおよろこ)びしたのは、大臣(だいじん)のトラです。
ライオンが王さまのつとめを果(は)たせなくなったときには、トラが王さまになれるのです。
「もうすぐライオンは目が見えなくなって、なんにもできなくなるぞ。そうしたら、わしが動物の国の王さまだ。王さまになったら、弱虫やチビの動物は、片(かた)っぱしから食ベてやる」
トラは、そう思っていました。
そして動物たちはみんな、トラの考えていることを知っていました。
「どうかライオンの目が、もう一度よく見えるようになりますように。トラが王さまになりませんように」
ライオンが大好(だいす)きな動物たちは、みんな一生けんめいに願(ねが)いました。
けれど、ライオンの目は、だんだん悪くなるばかりです。
「ああ、わしはもう、王さまとして動物の国をおさめることができないのかな」
ある日のこと、ライオンはため息をつきながら、トボトボと歩いていました。
すると、ほら穴(あな)の奥(おく)のほうから、人間のにおいがしてきます。
目は見えなくても、鼻はまだきくライオンは、そっとほら穴(あな)にはいっていきました。
ほら穴(あな)の奥(おく)では、人間のおじいさんが、一人で本を読んでいました。
おじいさんは大きなライオンが近づいてきたのを見ると、ビックリしてさけびました。
「た、助けてください!」
「人間のおじいさん、どうかビックリしないでください。わたしは、あなたを食べようなんて思っていません。ただ、あなたがとても年をとっているのに、こんな小さい字の書いてある本が読めるのを、ふしぎに思ったのです。年をとっても目がかすまない薬でも持っているのかと、聞きたいのです」
ライオンは、このごろ目が見えなくて困(こま)っていることを、おじいさんに話しました。
王さまの位(くらい)をねらっている、いじわるでわがままなトラのことも話しました。
「年をとっても目が見えるのは、これのおかげじゃよ」
ライオンの話を聞いたおじいさんはニッコリして、おでこにのせていた物をライオンにわたしました。
それは、メガネでした。
「あんたは、やさしいライオンじゃ。王さまらしいりっぱなライオンじゃ。あんたがいつまでも王さまでいられるように、このメガネをあげよう」
おじいさんは、ライオンにメガネをかけさせてくれたのです。
するとたちまち、あたりの物がハッキリと見えてきました。
草の葉っぱにとまっている、小さなテントウムシまで、ちゃんと見えました。
ライオンは大喜(おおよろこ)びでメガネをもらうと、ウォー、ウォーと、喜(よろこ)びながら、岩を飛(と)びこえて走って帰りました。
「ばんざーい、ばんざーい。王さまの目が見えるようになったぞ!」
動物たちは大喜(おおよろこ)びで、ライオンをむかえました。
たった一人、トラだけは、ガッカリして病気になってしまいましたけれど。
それからずっとライオンは元気で、今もメガネをかけて、動物の国をりっぱにおさめているのです。
おしまい
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