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2月12日の世界の昔話

オオカミとロバ

オオカミとロバ
アルバニアの昔話 → 国情報

 むかしむかし、一ぴきのオオカミ(→詳細)がおなかをすかせて、森の中をうろついていました。
 そこへ、ロバ(→詳細)が通りかかりました。
「これはいい。ごちそうにありつけるぞ」
 オオカミは舌なめずりしながら、ロバをよびとめました。
「おい! おまえはどこからきた?」
「はい、村からきました」
「そりゃ、けっこう。いいところヘきてくれた。おれはもう、はらぺこだ。おまえをくってやろう!」
 すると、ロバは大きな耳をブルブルとふるわせて、
「おねがいでございます。オオカミさん。それだけはおゆるしください」
と、たのみました。
「だめだ! おれははらペこだ」
「オオカミのだんな。わたしみたいなものをめしあがっても、じきにおなかがすいてしまいますよ。それよりも、わたしをたすけてくださったら、一年ぶんの肉を手にいれてあげようと思いますが」
「ふん! どうやって手にいれるんだ?」
「はい、わたしがオオカミのだんなをお乗せして、牧場へご案内します。うまそうなヒツジがたくさんいますよ。それも、まるまるとふとったやつばっかり。そうそう、子ヒツジもいますよ。わかくてやわらかいのが。それを好きなだけめしあがれるじゃありませんか」
「なるほど、それはいい話だ」
 オオカミは、ロバのさそいが気にいりました。
 ロバをたべてしまうより、ヒツジのいる牧場に案内させるほうがいいにきまっています。
 それに、だんななんてよばれたのも、生まれてはじめてです
「そういうことなら、乗ってやってもいい。だが、いいか、ゆれないように、たいらな道をしずかにいくんだぞ」
「ご心配なく。オオカミのだんな。しずかにおつれしますよ」
 オオカミはロバの背中によじのぼり、ロバのながい耳をつかみました。
 ロバはオオカミがゆれないように、ゆっくりと歩きだしました。
 オオカミはロバの背中で、とくいそうにそっくりかえっています。
 しばらくたちましたが、まだヒツジの牧場にはつきません。
「やい! ヒツジはいったい、どこにいるんだ?」
「もうすぐですよ。オオカミのだんな」
 そうこたえると、ロバはすこし足をはやめました。
 しばらくすると、オオカミはまたたずねました。
「おい、まだつかないのか?」
「もうすぐです。では、おいしいヒツジがはやくめしあがれるように、すこしいそぎますよ」
 ロバは、いきなりものすごいはやさでかけだしました。
 オオカミはやっとのことで、ロバの背中にしがみついています。
 ところが、ロバの走りついたのは、ヒツジのいる牧場ではなくて村だったのです。
 村の中を、ロバはオオカミを乗せてかけまわりました。
 そして、せいいっぱいの声をはりあげて、
「オオカミだ! オオカミがきたぞ!」
と、ふれまわりました。
 声を聞きつけた村の人たちは、こん棒やクワを持って家からとびだしてきました。
 そしてイヌたちも、ワンワンとほえながら、オオカミめがけてとびかかりました。
「たっ、たすけてくれー!」
 オオカミはロバからとびおりると、命からがらにげだしました。
 そしてにげながら、オオカミはつくづく思いました。
(ああ、おれはバカだった。おれのじいさんは、いばらないオオカミだった。おやじも、いばらないオオカミだった。二人ともいつも歩いていて、ひとの背中になんか乗らなかった。それなのにおれは、いい気になってロバに乗ってしまった。おかげでとんだ目にあってしまった。もう二度と、だんななんてよばれたくはない)

おしまい

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