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4月10日の世界の昔話

ヒヨコ星

ヒヨコ星
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 むかしむかし、ある町はずれの畑の中に、おじいさんとおばあさんがすんでいました。
 二人の家は小さくて、持ち物は一羽のメンドリだけでした。
 しばらくして、メンドリは六つのタマゴを生みました。
 六つのタマゴは、六羽のかわいいヒヨコになりました。
「さあ、お母さんのあとについておいで」
 メンドリは大よろこびで、ヒヨコたちの世話をしました。
 タカやトビなど、こわい鳥たちにさらわれないように気をつけて、だいじにだいじに育てていました。
 ところが、ある晩のことです。
 メンドリがヒヨコたちをねかしつけていますと、こんな話声が聞こえてきました。
「ばあさんや、明日から村でおまつりがあるそうじゃ。わしらもおまつりにいきたいが、神さまヘのおそなえ物をどうしよう?」
「本当にどうしましょう? わたしらは貧乏で、ものを買うお金もありません。でも、おまつりに何も神さまにおそなえしなかったら、ほかの人たちに、けちんぼうと思われるでしょうね」
 おじいさんとおばあさんは、おまつりのおそなえ物の相談をしていたのです。
 そしてとうとう、おじいさんがいいました。
「どうだ、一羽しかいないが、あのメンドリをおそなえしたら」
 おばあさんは、悲しそうにうなずきました。
「そうですね。ヒヨコたちがかわいそうですけど、それしかないですね」
 二人の話を、メンドリはみんな聞いていました。
 あしたは、小さな子どもたちをのこして、死ななければなりません。
 メンドリは悲しくてたまらなくなって、ヒヨコたちにいいました。
「かわいい子どもたち、あした、お母さんは死ななければならないの。おねがいよ、お母さんがいなくなっても、おまえたちはけんかせずに、なかよくくらしておくれ。食べものを見つけたら、いつでもいっしょに食べてね。けっして、はなればなれにならないでね。それから、家の外に出たりしちゃだめよ。こわいイヌがいるからね」
「いやだよ! お母さん。どうして死ななくちゃならないの?」
 ヒヨコたちが、なき出しました。
 お母さんも、なき出したいのをがまんして、
「おじいさんとおばあさんが、わたしの肉を神さまにおそなえするとはなしていたの。死ぬことはこわくないけれど、小さなおまえたちをのこしていくのが心配で。それからそうだわ、どんなに遊びたくなっても、あき地へは出ていかないと約束して。タカやトビにねらわれるからね。それから・・・」
と、ひと晩じゅう、ヒヨコたちにいろいろなことをいいきかせました。
 つぎの日、おじいさんは朝はやくおきると、すぐにメンドリを殺しました。
 それから羽をむしるために、グラグラにえたお湯の中に、メンドリをなげこみました。
 それを見ていたヒヨコたちは、もう、ジッとがまんしていることができません。
「お母さん、今すぐ、ぼくたちもいくからね!」
「天国に行っても、いっしょにいようね!」
 ヒヨコたちは小さな羽をはばたかせると、つぎつぎと、お湯の中へとびこんでいきました。
 このかわいそうな鳥たちのようすを、天の神さまが見ていました。
「なんという、美しい母と子の心だろう。おまえたちがいつまでもいっしょにいられるよう、星に生まれかわらせてやろう」
 こうして、お母さんと六羽のヒヨコたちは、夜空にきらめく七つの星になりました。

おしまい

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