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♪音声配信(html5)
音声 まちゃりんの読んだり〜の♪

 むかしむかし、ある森の近くに、おくびょうなお百姓(ひゃくしょう)がすんでいました。
 ある日、お百姓(ひゃくしょう)とおかみさんが、いつものように畑をたがやしていると、森のおくで、ガサゴソと音がしました。
「はて、なんだろう?」
 お百姓(ひゃくしょう)は、音のするほうを見てビックリ。
 大きなクマが、のっそりのっそりと、出てきたのです。
「た、たすけてくれえ!」
 よわむしのお百姓(ひゃくしょう)は、おかみさんをおきっぱなしにして、あわててにげだしました。
 おかみさんも、声がでないほどビックリしましたが、でも、おかみさんはお百姓(ひゃくしょう)ほどよわむしではありません。
「ようし!」
 おかみさんは、お百姓(ひゃくしょう)がおいていったオノをふりあげると、クマにむかっていきました。
 そしておかみさんは、たった一人でクマとたたかい、とうとうクマをやっつけたのです。
 おかみさんが、たおしたクマをひきずって家までかえると、よわむしのお百姓(ひゃくしょう)は、ビックリしていいました。
「わあ。にょうぼうのおばけだ!」
 お百姓(ひゃくしょう)は、家の戸をしっかりしめて、おかみさんを中へいれようとしません。
 おかみさんがクマに殺(ころ)されて、ばけてきたと思っているのです。
「しっかりしなさいよ。わたしですよ。おばけじゃありませんよ」
 おかみさんがなんどもいったので、やっとよわむしのお百姓(ひゃくしょう)は、おかみさんと死んだクマを家の中へいれてやりました。
「かんしん、かんしん。よくおまえ一人で殺(ころ)せたものだ。だが、もし人にきかれたら、このクマはわしが殺(ころ)したというんだぞ」
と、お百姓(ひゃくしょう)がいいました。
「あら、どうしてですか?」
「よく考えてみろ。男でさえも殺(ころ)せないクマを、なんで女のおまえが殺(ころ)せると思う。みんな、おまえがうそをついていると思うぞ。だからクマたいじをしたのは、わしだということにしておけ」
 お百姓(ひゃくしょう)は、おかみさんにそういうと、さっそくお城(しろ)へいって、
「クマを殺(ころ)しました」
と、殿(との)さまにいいました。
 殿(との)さまがしらべてみると、たしかにクマが殺(ころ)されています。
「なるほど。おまえはクマたいじの勇士(ゆうし)だ。けらいにしてやろう」
 わけを知らない殿(との)さまは、よわむしのお百姓(ひゃくしょう)をけらいにして、ごほうびをたくさんあげました。
 クマたいじのお百姓(ひゃくしょう)は、どこへいっても評判(ひょうばん)です。
「えっへん! おっほん!」
 お百姓(ひゃくしょう)は毎日、大いばりで歩き回りました。
 ところがある日、こまったことがおこりました。
 お城(しろ)井戸(いど)の中に、コブラという毒蛇(どくへび)がいるので、それをたいじするようにと、殿(との)さまに命令(めいれい)されたのです。
「わあ、こまったな。どうしよう?」
 お百姓(ひゃくしょう)はおそろしくて、ブルブルとふるえだしました。
 なにしろ、コブラの毒(どく)は、とても強くて、かまれたらすぐに死んでしまうのです。
 でも、いつもいばっているので、コブラたいじができないとはいえません。
 お百姓(ひゃくしょう)はしかたなしに、長いロープを井戸(いど)の中にたらして、井戸(いど)の中へと、おりていきました。
 でも、井戸(いど)の中はうすぐらくて、どこにコブラがいるのかわかりません。
「ああ、こわい、こわい。やっぱり、コブラはたいじできませんと、あやまろう」
 よわむしのお百姓(ひゃくしょう)は、はやく逃げ出(にげだ)そうと、ロープをむちゅうで引っ張(ひっぱ)りました。
 しかし、ロープだと思ってにぎったのは、ロープではなくコブラだったのです。
「ひゃあ。コ、コ、コブラだあ!」
 お百姓(ひゃくしょう)は、コブラをギュッとにぎったまま、手をブンブンとふりまわしました。
 すると、お百姓(ひゃくしょう)がつかんだのは、ちょうどコブラの首だったので、コブラはいきができなくて、死んでしまったのです。
「・・・おや? おおっ! ばんざーい! コブラをやっつけたぞ。ロープをひきあげろ。はやくひきあげろ!」
 お百姓(ひゃくしょう)は、大声でさけびました。
 よわむしのお百姓(ひゃくしょう)は、毒蛇(どくへび)のコブラを殺(ころ)したので、また殿(との)さまにほめられました。
「おまえほどいさましくて、強いものはいない。おまえがいてくれたら、となりの国の兵隊(へいたい)が、なん百人せめてきたって平気じゃ」
「さようでございますとも。敵兵(てきへい)の二千や三千、ただのひとひねりでございますわい。ワハハハハハ」
 お百姓(ひゃくしょう)が、とくいになって殿(との)さまと話していると、けらいたちが、あわててやってきました。
「たいへんでございます。となりの国の兵隊(へいたい)が、この町の近くまでせめてきました!」
「なに、それはほんとうか。よし、クマとコブラをたいじした勇士(ゆうし)よ。おまえがいって、敵兵(てきへい)どもをひねりつぶしてこい!」
「え? わたし一人でですか?」
「そうだ、さっき、敵兵(てきへい)の二千や三千、ただのひとひねりと言ったであろう。期待しておるぞ!」
 お百姓(ひゃくしょう)は、まっさおになりました。
 でも、殿(との)さまのいいつけなので、しかたなしにでかけました。
「たった一人だなんて、どうしたらいいのだろう。・・・そうだ。まずは敵(てき)のようすをさぐってこよう」
 お百姓(ひゃくしょう)は夜になると、コッソリと敵軍(てきぐん)のそばまでしのんでいきました。.
 見ると、敵兵(てきへい)がおおぜいいるそばに、大きな木がありました。
 お百姓(ひゃくしょう)は敵兵(てきへい)に見つからないように、その木の上にのぼりました。
 そして、そっと耳をすましていると、敵兵(てきへい)たちは、こんなことを話しています。
「この国の兵隊(へいたい)でこわいのは、あの、クマとコブラをたいじした男だけだ。あいつさえやっつけてしまえば、こっちの勝ちだ」
「よし、まずは、あのクマたいじの勇士(ゆうし)をやっつけよう」
 よわむしのお百姓(ひゃくしょう)は聞きながら、こわくてこわくて、ガタガタとふるえだしました。
 ところが、あんまりふるえているので、つかまっていた枝(えだ)がおれてしまいました。
 ドシーン!
 お百姓(ひゃくしょう)はまっさかさまに、敵兵(てきへい)のいるまん中へ、ころがりおちました。
「敵(てき)だ! 敵(てき)が一人でせめてきたぞ!」
 こうなればやけくそです。
 お百姓(ひゃくしょう)は、すぐに立ちあがると、もっていた刀をふりあげ、
「こらあ! ものどもよく聞け! わしがクマとコブラをたいじした勇士(ゆうし)だぞ! わしは空からとびおりることもできるし、まいあがることもできる。さあどうだ。わしとたたかうものは、出てこい!」
と、大声でさけびました。
 敵兵(てきへい)たちは、ビックリ。
 空から突然(とつぜん)、評判(ひょうばん)のクマたいじの勇士(ゆうし)がとびおりてきたので、もう、こわくてなりません。
「それっ。にげろ、にげろ!」
と、あわててにげだしました。
 こうして、クマとコブラをたいじしたお百姓(ひゃくしょう)は、おおぜいの敵兵(てきへい)を一人で追い返したので、殿(との)さまからたいそうほめられました。
 そして国じゅうの人から、強い勇士(ゆうし)とほめられたのです。

おしまい

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