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3年生の世界昔話(せかいむかしばなし)
王子と指輪(ゆびわ)
インドの昔話(むかしばなし) → インドのせつめい
むかしむかし、ある国に、若(わか)い王子がいました。
この王子には、お父さんはなく、お母さんと二人で、まずしく、くらしていました。
ある日、お母さんは王子に、一まいの金貨(きんか)をわたしていいました。
「これをつかって、らくなくらしができるように、考えてごらん」
お母さんは王子に、知恵(ちえ)とお金のある、りっぱな王子さまになってほしいと思ったのです。
つぎの日、王子は町で、頭に大きな袋(ふくろ)をのせた男にあいました。
「もしもし、その袋(ふくろ)には、どんな宝(たから)ものがはいっているんですか?」
「これはネコですよ。毛なみのよい、上等(じょうとう)のネコです」
王子はネコが大すきだったので、たいせつな金貨(きんか)をやって、ネコを一ぴきわけてもらいました。
「まあ、ネコ一ぴきで金貨(きんか)をだましとられるなんて、おまえはなんという、バカものでしょう」
お母さんは、ガッカリしました。
でも、何日かたつと、また王子に金貨(きんか)をわたしていいました。
「こんどこそ、気をつけてお金をつかうのですよ」
ところが、散歩(さんぽ)にでて、ヘビ使(つか)いにであった王子は、こんどはヘビと金貨(きんか)をとりかえてしまったのです。
お母さんは、あきれて、
「もうわたしには、とてもおまえのめんどうはみきれません、じぶんの力でくらすようにしなさい」
と、いうと、王子をおいたまま、おばあさんの住(す)んでいる、遠い国へいってしまいました。
王子はネコとヘビをつれて、トボトボと旅(たび)にでました。
こうして王子は、何年ものあいだ、旅(たび)をしながら、ネコとヘビをたいせつにそだてました。
こうしたある日のこと、王子は町でお母さんにであいました。
お母さんは、かなしんでいいました。
「いつまで、そんなまずしいくらしをつづけているつもりなの。そんなきたないヘビは、早くすててしまいなさい」
王子は、かなしそうにいいました。
「ヘビくん、ごめんよ。ぼくがだらしないから、仲良(なかよ)しのきみとも、別(わか)れなければならないんだ。本当にごめんよ」
すると、ヘビが言いました。
「ああ、心やさしい王子さま、あなたはいいかたなのに、なぜ、不幸(ふこう)な目にばかりあうのでしょう。もしよかったら、わたしの国へいきましょう。わたしの父はヘビの国の王です。父は、わたしがせわになったお礼(れい)に、魔法(まほう)の指輪(ゆびわ)をくれるでしょう。でも、ゆびわはぜったいに、てばなしてはいけませんよ」
こうして、ヘビからもらった指輪(ゆびわ)をはめた王子は、ネコといっしょに旅(たび)をつづけ、ふかいジャングルにやってきました。
日はとっぷりくれて、どこまでいっても、うす気味(きみ)わるいけものの、うなり声がします。
「つかれたなあ。このジャングルが、わたしの国だったらいいのに。大きなご殿(てん)にあかりがともっていて、わたしをたすけてくれた人たちと、くらせたらいいのになあ」
王子が一人ごとをいったそのとき、たちまちジャングルは消(き)えてなくなり、緑(みどり)の木につつまれた、かがやくようなご殿(てん)が目の前にうかびあがりました。
ご殿 てん)のまどからは、王子のお母さんや知りあいの人たちの、うれしそうな顔がのぞいています。
王子はいつのまにか、りっぱな王さまになって、おともをしたがえて立っていたのです。
魔法(まほう)の指輪(ゆびわ)のおかげで、王さまになった王子は、美(うつく)しいおきさきをむかえて、しあわせにくらしていました。
ある日、となりの国の王さまが、この国の海べをとおりかかりました。
と、そこに、美(うつく)しい長い髪(かみ)が、クルクルとマリとなってとんできました。
「なんときれいな髪(かみ)だろう。きっと、美(うつく)しい姫(ひめ)がおとしたものにちがいない。ぜひ、この人をきさきにむかえたいものだ」
となりの国の王さまは、さっそくおふれをだしました。
「この髪(かみ)の持ち主(もちぬし)をつれてきた者(もの)に、たくさんのほうびをつかわす」
海べに住(す)むおばあさんが、これを見て、ニヤリとわらいました。
「これは海に水あびにくる、おきさきの髪(かみ)にちがいない。おきさきをだまして、となりの国の王さまのところへつれていこう」
つぎの日、海べに水あびにきたおきさきに、おばあさんは、かなしげな身(み)のうえ話をしました。
「まあ、かわいそうなおばあさん」
やさしいおきさきは、おばあさんをご殿(てん)に、ひきとってやりました。
さて、おばあさんはご殿(てん)ではたらいているうちに、魔法(まほう)の指輪(ゆびわ)のひみつを知ってしまいました。
「なんという、すばらしい指輪(ゆびわ)だろう。あの指輪(ゆびわ)さえ手にはいれば、もうこっちのものさ」
ある日、おばあさんはいかにもつらそうに、いいました。
「ああ、頭がいたくてわれそうだ。医者(いしゃ)や薬(くすり)ではなおせない。おやさしい王さま、おきさきさま。どうかちょっとだけ指輪(ゆびわ)をかしてくださいませんか」
お人よしの王子は、ついうっかり、指輪(ゆびわ)をわたしてしまいました。
そのとたん、おばあさんのすがたは空にまいあがり、たちまち見えなくなってしまいました。
となりの国の王さまは、毎日、首をながくして、いい知らせをまっていました。
「王さま、やっと見つけましたよ。ごほうびをください」
やってきたのは、あのおばあさんです。
「この指輪(ゆびわ)をはめて、姫(ひめ)をよんでごらんなさい。そして、おきさきになれと、命令(めいれい)すればいいのです」
こうして、となりの国の王さまは、指輪(ゆびわ)の力で、王子のおきさきをじぶんのものにしてしまいました。
かわいそうに、指輪(ゆびわ)を取(と)られた王子は、おきさきもご殿(てん)もけらいもなくして、もとのジャングルにネコと二人だけでたっていたのです。
「ヘビのいいつけをわすれて、指輪(ゆびわ)をかしたわたしがバカだった。これからはまた、まずしいくらしだ」
王子とネコは、また、あてのない旅(たび)に出ました。
王子はやがて、となりの国のご殿(てん)の前につきました。
そこではまずしい人びとが、おきさきから食べ物(たべもの)をもらっていました。
王子とネコが、おちた食べ物(たべもの)をひろおうとすると、とつぜんネズミの大軍(たいぐん)がやってきて、あっというまに、食べ物(たべもの)をぜんぶさらってしまいました。
さあ、ネコのでばんです。
ネコはカンカンにおこって、いちばんふとった王さまネズミの首をつかまえて、どなりました。
「こらっ。わるいやつめ! おまえをたべてしまうからな!」
王さまネズミは、ふるえながらいいました。
「どうか、おたすけください。そのかわり、なんでもいいつけをまもりますから」
「ふん。それじゃ、こうしよう。わたしのご主人(しゅじん)は、この国の王さまに、指輪(ゆびわ)をとられてこまっている。とりかえしてくれれば、おまえの命(いのち)はたすけてやろう」
さて、夜がふけると、大軍(たいぐん)をひきいたネズミの王さまは、ご殿(てん)にむかいました。
「宝(たから)の箱(はこ)を、さがすのだ!」
「指輪(ゆびわ)をみつけて、王さまの命(いのち)をおたすけしよう!」
ネズミのけらいたちは手わけして、かたっぱしから宝(たから)の箱(はこ)をあけてみました。
「あっ、あったぞ。指輪(ゆびわ)だ!」
「ばんざい」
こうして王子は、ネコのおかげで、指輪(ゆびわ)をとりもどすことができました。
王子が指輪(ゆびわ)をはめると、キラキラとかがやくご殿(てん)があらわれ、けらいが大ぜいあつまりました。
そして、美(うつく)しいおきさきが、うれしそうにかけよってきます。
ネコとヘビをそだてたお人よしの王子は、こうしてネコとヘビにたすけられ、しあわせにくらしたということです。
おしまい
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