１ねんせいのせかいむかしばなし



ズルタンじいさん
グリムどうわ → グリムどうわ の せつめい

　むかしむかし、　ズルタンと　いう、　としとったイヌが　いました。
　あるひ、　ズルタンは　かいぬしの　おひゃくしょうさんふうふが、　ヒソヒソはなしを　しているのを　ききました。
「あのイヌは　はが　１ぽんも　なくて、　どろぼうも　つかまえられない。　もう　やくにたたないから　ころしてしまおう。　むだなめしを　くわせるほど、　いえは　かねもちじゃないからね」
　ズルタンは　かなしくなって、　なかのいいオオカミに　あいにいきました。
　すると、　オオカミが　いいました。
「よいかんがえがある。　あした、　おれが　あんたのかいぬしの　こどもを　さらうから、　おいかけてくるんだ。　もりのなかで　あんたに　こどもをわたしてやるよ。　かいぬしは　あんたが　オオカミから　こどものいのちをすくったおもって、　きっと　だいじにしてくれるようになるぜ」
　オオカミの　けいかくは、　とても　うまくいきました。
　おひゃくしょうさんも　おかみさんも、　ズルタンを　しぬまで　かわいがり、　だいじにすると　ちかったのです。
　すっかり　らくなくらしになった　ズルタンに、　こんどは　オオカミが　こんなことを　いいました。
「あんたの　かいぬしの　ヒツジを　さらうけど、　このまえ　たすけてやったんだから　みのがして　くれるよな」
「それはだめだ、　ほかのことなら　ともかく、　ヒツジをまもるのは　ワシのしごとだ」
　オオカミは　ズルタンに　はらをたてました。
「この　おんしらず。　よし、　あした　もりにこい。　けっとうだ！　おもいしらせてやるぞ！」
　だけど、　オオカミと　としよりの　ズルタンでは、　オオカミの　かちに　きまっています。
　そこで　オオカミは、　すけだちを　ひとりつけてきても　いいといいました。
　でも、　ズルタンの　すけだちなってくれるのは、　おなじいえに　すんでいる、　３ぼんあしの　ネコしか　いませんでした。
　ネコは　あるくと　あしがいたいので、　しっぽを　ピンと　たかくたてていました。
　オオカミは　イノシシに　すけだちを　たのみ、　もりのなかで　まちかまえていました。
　ところが、　ネコの　まっすぐなしっぽが　ながいつるぎに　みえたので　ビックリ。
「あいつを　あまくみていたな！」
「だが　ネコのやつ、　いやに　ゆっくりだな。　きっと　いしをひろいながら　ちかづいて　きているんだ」
　こわくなった　オオカミと　イノシシは、　くさのしげみに　かくれました。
　しかし、　イノシシの　みみが　しげみからはみでて、　ピクピクと　うごいています。
「あっ、　ぼくの　だいこうぶつの　ネズミだ！」
　ネコが　おおよろこびで　イノシシのみみに　かみつくと、　イノシシは　ひめいをあげて　にげていきました。
　オオカミは　ビクビクかくれているところを　みられて、　とても　かっこわるく　おもいました。
「はが　１ぽんも　なくても、　あんたは　つよいイヌだ。　もう、　あんたの　いえの　ヒツジを　おそうことは　しないよ」
　ズルタンと　オオカミは、　また　なかなおりしました。

おしまい