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3年生の世界昔話(せかいむかしばなし)
吸血鬼(きゅうけつき)
ロシアの昔話(むかしばなし) → ロシアのせつめい
むかしむかし、ロシアのある村に、バニアという男がすんでいました。
バニアはナベやカマを売ったり、こわれたものをなおす仕事(しごと)をしていました。
ある晩(ばん)、仕事(しごと)で帰るのが、とてもおそくなってしまいました。
「もう、そとはまっ暗(くら)だ。今夜はあそこにとまるとしよう」
と、いって、バニアは古ぼけた教会のまえに、ウマをとめました。
教会にはだれもすんでおらず、まわりは、しずまりかえった墓場(はかば)でした。
「きみがわるいな。まあいい、ねるとしよう」
バニアは、ねごこちのよさそうな場所(ばしょ)をさがすと、グーグーとねむってしまいました。
今夜は星空のきれいな日で、空にはまるい月が、かかっています。
ボーン、ボーン。
教会の鐘(かね)が、十二時をうちました。
その時です。
墓場(はかば)の地面(じめん)が、グラグラとゆれ出しました。
バニアはビックリしてとびおきると、あわてて近くの木のかげにかくれました。
すると、ゆれていた地面(じめん)がバックリとひらき、中から白い服(ふく)をきた、おそろしい顔の魔物(まもの)が出てきたではありませんか。
頭には棺(かん)おけのふたをのせ、目は青くひかり、口にはするどいキバがあります。
この魔物(まもの)は、人間の血(ち)を吸(す)って殺(ころ)してしまう、吸血鬼(きゅうけつき)にちがいありません。
月の明るい晩(ばん)に、墓場(はかば)からあらわれて、人間の血(ち)をもとめてさまよい歩くのです。
バニアは木のかげで、ブルブルとふるえていました。
吸血鬼(きゅうけつき)は、棺(かん)おけのふたを教会のかベにたてかけると、人間の血(ち)をもとめて村のほうへいってしまいました。
「このままでは、村の人たちが殺(ころ)されてしまう」
バニアは、村の人たちをすくう方法(ほうほう)を、考えました。
「そうだ! たったひとつ、方法(ほうほう)があるぞ!」
バニアは、小さいころ、おばあさんから聞いたはなしを、思い出しました。
《吸血鬼(きゅうけつき)は、太陽(たいよう)の光に弱く、明け方までに棺(かん)おけに入って、ふたをしっかりしめないと、死(し)んでしまう》
さっそくバニアは、教会のかべにたてかけてあった棺(かん)おけのふたをかかえると、木のかげにかくれて、吸血鬼(きゅうけつき)が帰ってくるのをまちました。
夜明け近くになると、吸血鬼(きゅうけつき)が満足(まんぞく)そうな顔で、帰ってきました。
ところが、教会のかべを見てビックリ。
「ややっ、ふたがない! あれがなくては、おれは死(し)んでしまう!」
吸血鬼(きゅうけつき)は、ひっしになって、棺(かん)おけのふたをさがします。
「どこだ、どこだ、どこだ、どこなんだー!」
そのあわてたようすがおかしくて、バニアはクスッと、わらってしまいました。
それに気づいた吸血鬼(きゅうけつき)は、こわい顔でバニアの方にふり向(む)きました。
「さては、おまえだな、棺(かん)おけのふたをぬすんだのは! すぐかえさないと、おまえの血(ち)をぜんぶすってしまうぞ!」
でも、バニアも負(ま)けてはいません。
「ふん、やれるものならやってみろ。この棺(かん)おけのふたを、バラバラにしてやるぞ!」
と、いって、バニアは棺(かん)おけのふたに、鉄(てつ)のナベをふりかざしました。
「ああ、やめてくれ、やめてくれ!」
吸血鬼(きゅうけつき)は、なさけない声をあげました。
「じゃあ、今日はだれを殺(ころ)してきたのかをいえ! それから、その人間を生きかえらせる方法(ほうほう)もいえ!」
吸血鬼(きゅうけつき)は、かぼそい声でこたえました。
「村のグレゴリというじいさんだ。生き返(いきかえ)らせるには、おれの服(ふく)の左がわをきりとって、死人(しにん)の部屋(へや)で、もやせばいい。そのけむりが死人(しにん)を生きかえらせるのだ」
そこでバニアは、棺(かん)おけのふたを返(かえ)してやりました。
吸血鬼(きゅうけつき)は、ふたを頭にのせて、急(いそ)いで墓(はか)にとびこみました。
ちょうどそのとき、ニワトリがコケコッコーとなきました。
夜が、明けたのです。
「ギャアーー! ひと足おそかったか!」
朝日をあびた吸血鬼(きゅうけつき)は、頭に棺(かん)おけのふたをのせたまま、干物(ひもの)のように、ひからびてしまいました。
バニアは吸血鬼(きゅうけつき)の服(ふく)の左がわをきりとると、村へ急(いそ)ぎました。
そして、グレゴリじいさんの家を見つけると、吸血鬼(きゅうけつき)のいったとおりの方法(ほうほう)で、グレゴリじいさんを生き返(いきかえ)らせてやりました。
それから村人たちを案内(あんない)して、ひからびた吸血鬼(きゅうけつき)を見せました。
バニアは、とねりこ(→モクセイ科の落葉(らくよう)小高木)の木の枝(えだ)をとがらすと、おどろいている村人のまえで、グサリと吸血鬼(きゅうけつき)のむねにつきさしました。
「さあ、これでこいつは、二度(2ど)と生きかえることはできません」
吸血鬼(きゅうけつき)をやっつけたバニアに、村人たちは何度(なんど)も何度(なんど)も、お礼(れい)をいいました。
おしまい
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