福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 8月の世界昔話 > ほらふき男爵 月へオノを取りに行く話
8月21日の世界の昔話
ほらふき男爵 月へオノを取りに行く話
ビュルガーの童話 → 詳細
わがはいは、ミュンヒハウゼン男爵(だんしゃく→詳細)。
みんなからは「ほらふき男爵」とよばれておる。
きょうは、トルコヘ戦に狩り出されたときの話をしよう。
運の強いわがはいでも、ときには、しくじることもあってな。
わがはいは、うかつにもトルコ兵につかまると、ドレイにされてしまったのじゃ。
わがはいに与えられた仕事は、トルコ王の牧場のミツバチの見はり番だった。
日がな一日、ハチのお守りをして、タ方になると巣箱へハチを連れもどすという、なんともぼうけん家には似あわぬ仕事じゃ。
さて、あるタ方のこと、ミツバチの数をかぞえると、一匹だけ帰っておらん。
そこでゆくえをさがしてみれば、二頭のクマが今しも、そのハチを食らおうとしているところだった。
わがはいはとっさに、腰の銀のオノをひきぬくと、クマたちめがけて投げつけたんじゃ。
ところがオノは、ねらいをはずして上へ上へと空高くまいあがると、見るまにお月さまにつきささってしまったのじゃ。
さいわいクマはハチをほうり出して逃げてくれたが、となるとつぎは、オノを取りもどさなくてはならん。
だが、手をのばそうにも、お月さまはあまりに高い。
といって、はしごがあるじゃなし。
どうしたものかと、考えあぐねているときに、ポケットにあるトルコマメのことを思い出したのじゃ。
このマメときたら、なにしろのびるのが速いからな。
そこで足元の土に植えると、トルコマメはすぐに芽(め)を出し、ツルをのばし、あっというまに空ヘのびあがって、まもなく三日月のはじっこにからみついたんじゃ。
おかげでわがはいは、ラクラクと月へ到着した。
ところが月というところは、どこもかしこも銀色にかがやいていて、これまた銀のオノをさがすのが一苦労。
やっとのことで見つけ出し、さて、地上に帰ろうとすると、なんたることか、マメのツルは太陽の熱で枯れてしまっておった。
シカたなくわがはいは、見つけたワラでナワをあみ、それをつたっておりることにしたんじゃ。
ナワの長さが足りないので、少しおりると用済みのナワをオノで切っては下につぎたし、それをくり返して、あと地上に四〜五キロとなったとき、わがたのみのナワが突然切れて、わがはいはまっさかさまに大地に激突して、何十メートルも地中深くめりこんでしまった。
あのときは、本当に痛かったぞ。
そして、深い穴からどうやってはいあがろうかと腕をくんだときに目についたのが、生まれて四十年のばし続けていた、わが長つめじゃ。
これで穴の壁に階段をきざみ、無事、地上に戻ったというしだいじゃ。
では、また次の機会に、別の話をしてやろうな。
おしまい