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9月28日の世界の昔話

コウモリのはねをつけた小オニ

コウモリのはねをつけた小オニ
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 むかしむかし、一人の王子さまがいました。
 ある日、森の中をあるいていると、大きな木の上から人のはなし声がきこえてきました。
 ふしぎにおもってその木をのぼっていくと村があり、風にたおされた家をみんなでたてなおしているところでした。
 村人たちは、王子さまをみて、
「どうか、わたしたちのしごとを手つだってください」
と、いいました。
 でも、木はまだまだ上へつづいているので、王子さまは、
「わたしは、ここへきたのではない」
と、いって、どんどん上へのぽっていきました。
 すると、木のてっぺんにすばらしい宮殿(きゅうでん)がたっていて、うまいぐあいに門があいていました。
(いったい、だれがすんでいるのかな?)
  王子さまは宮殿にはいり、あちこちのへやをみてまわりました。
 どのへやにも、背中にコウモリのはねをつけた小オニ(→詳細)たちが、グッスリとねていました。
 ところがいちばんおくのへやをのぞいてみると、うつくしい王女さまが、金のくさりではしらにしばりつけられています。
「おねがいです。わたしをたすけてください」
 王女さまが、王子さまをみていいました。
 王子さまは、おどろいてたずねました。
「だれが、こんな目にあわせたのです?」
「この宮殿にすんでいる、小オニの親分です。いまでかけています。さあ、はやく、このくさりをきってください。グズグズしているともどってきます」
 そこで王子さまは手オノでくさりをきると、王女さまの手をとって宮殿のそとへはしりだしました。
 それから大きな木にとびつき、王女さまをかかえるようにして森の中におりたのです。
 ちょうどそのころ、親分が宮殿へもどってきました。
 王女さまがにげたのをしって、親分が声をあげました。
「みんなおきろ! 王女がにげだしたぞ!」
 ねむっていた子分たちはビックリしてとびおきると、親分のあとにつづいてそとへとびだし、つぎつぎと木にとびつきました。
 とちゅうの村まできて、親分が村人たちにたずねました。
「王女が、ここをとおっていかなかったか?」
「ああさっき、とおっていったよ」
 それをきくと、小オニどもは大いそぎで下へいき、森の中へとびおりました。
 王子さまはうしろからきこえてくる小オニたちの声をきいて、王女さまをすばやく木のしげみにかくし、手にもっていたオノで木をきりはじめました。
 そこへ子分をひきつれた、小オニの親分がやってきました。
 親分は、王子さまを木こり(→詳細)だとおもってたずねました。
「おい、木こり。王女をみかけなかったか?」
 そのとたん、王子さまは、
「えーん、えーん、えーん」
と、声をあげてなきはじめました。
 親分はビックリして、
「なぜなく? わしは、王女をみなかったかときいているんだ」
と、どなりました。
 すると王子さまが、なきながらいいました。
「えーん。だって、あのゆうめいな小オニの親分が、病気でしにそうだっていうではありませんか」
「なんだと! そりゃ、ほんとうか?」
 王子さまが、コクリとうなずきました。
「まさか、そんな・・・」
 それで親分は、大あわてで宮殿へもどっていきました。
「おまえたち、わしが病気で死にそうにみえるか?」
「とんでもない。親分はとても元気ですよ」
 子分たちが、口をそろえていいました。
 親分はそれをきくと、ホッとして、
「あの木こりめ、よくもうそをつきやがったな。ただじゃ、おかねえ!」
と、いって、ふたたび木をおりていきました。
 王女さまとにげていた王子さまは、ほらあなの中へ王女さまをかくすと、服をうらがえしにきて、わざと小オニたちのほうへちかづいていきました。
「おいおまえ、王女をみなかったか?」
 小オニの親分が、たずねました。
「さあ」
「それじゃ、木こりをみなかったか?」
「だれもみやしないよ。とにかくいまは、あんたとはなしているひまがないんだ。王さまの使いで、小オニのいる宮殿へ、いそいでしらせにいかなくちゃならないんだ」
「なに、小オニのいる宮殿へだと。なにをしらせにいくんだ?」
「あんたきかなかったのかい? あのゆうめいな小オニの親分が死んだのさ」
 それをきくと、小オニの親分はとびあがっておどろき、木のてっぺんの宮殿へもどっていきました。
「おい、みんな! 小オニの親分とはだれのことだ?」
「そりゃ、そこにいる親分のことで」
 小オニたちが、いっせいに親分をゆびさしました。
「そうだろう。それならどうしてこのわしが死んでいるんだ? こんなにピンピンしているのに。わしは生きているだろ?」
「あたりまえですよ! ごらんのとおり、親分はげんきで生きているじゃないですか!」
「そうか。くそ、あのうそつきめ。ただじゃおかんぞ!」
 小オニの親分は、またまた子分どもをひきつれて、森の中へもどってきました。
 ふと森のそとをみると、王女さまと王子さまのはしっていくすがたがみえます。
「あそこだ!」
 親分はコウモリのはねをひろげると、風のように二人をおいかけました。
 二人が城のまえまできたとき、親分が王女さまのうわぎをつかみました。
 王女さまはいそいでうわぎをぬぐと、そのまま城の中へとびこみました。
 王子さまはうしろをふりむきざま、オノをふりあげて、小オニの親分の頭を力いっぱいなぐりつけました。
「いたい!」
 親分はひめいをあげてとびあがると、もうあともみずににげだし、じぶんの宮殿へもどっていきました。
 このあと、王子さまはこの王女さまとけっこんして、しあわせにくらしたということです。

おしまい

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