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2年生の世界昔話(せかいむかしばなし)
幽霊(ゆうれい)のたからもの
イギリスの昔話(むかしばなし) → イギリスのせつめい
むかしむかし、イギリスのある地方(ちほう)に、大きな農場(のうじょう)がありました。
その家(いえ)は、あたりでは有名(ゆうめい)な、幽霊屋敷(ゆうれいやしき)です。
夜(よる)になると、背(せ)のたかい男の幽霊(ゆうれい)があるきまわるというのです。
家(いえ)には、しばらくまえから、ある家族(かぞく)がくらしていました。
畑(はたけ)も家(いえ)もすばらしかったし、昼間(ひるま)はなにもおかしなことはないのだから、空き家(あきや)にしておくのはもったいないというわけです。
家族(かぞく)は、幽霊(ゆうれい)がいつごろでてくるのか、よく知(し)っていたので、その時間(じかん)になるまえに、かならずねてしまうことにきめていました。
幽霊(ゆうれい)はこわいけれど、部屋(へや)でぐっすりねむっていれば、大丈夫(だいじょうぶ)です。
あるとき、この家(いえ)の末っ子(すえっこ)が、きゅうにおもい病気(びょうき)になりました。
お母(かあ)さんは心配(しんぱい)して、二階(にかい)の部屋(へや)で看病(かんびょう)をしていると、夜(よる)おそくなって子どもが、
「水が、のみたい」
と、いいだしたのです。
お母(かあ)さんは、テーブルにおいてあった水さしの水をのませようとしましたが、子どもはのもうとしません。
「それじゃいやだよ。くみたての水がのみたい」
お母(かあ)さんは、こまってしまいました。
だって、そろそろ幽霊(ゆうれい)があるきまわる時間(じかん)だったからです。
「ねえ、おねがい。あたらしい水をくんできて」
子どもは、よわよわしい声(こえ)で、なんどもなんどもいいました。
お母(かあ)さんは、かくごをきめると、
「いってくるわ」
と、水差(みずさ)しをかかえて部屋(へや)をでました。
お母(かあ)さんが部屋(へや)を出ると、かげのようなものがスーッと動(うご)いています。
でも、お母(かあ)さんは、
「気のせい、気のせいよ」
と、自分(じぶん)にいいきかせました。
階段(かいだん)をおりるとき、かげが自分(じぶん)のあとをつけてくるような気がしました。
「気のせい、気のせいよ」
お母(かあ)さんはしっかり、まえだけをみてあるきつづけました。
庭(にわ)をよこぎっていくと、ヒタヒタヒタと、うしろから足音がついてきます。
「気のせい、気のせいよ」
そして、水をくむポンプのところまできたとき、だれかがお母(かあ)さんのかたに手をおきました。
「ギャーーー!」
お母(かあ)さんがビックリしてふりむくと、目のまえにガイコツのような顔(かお)の男が、ボンヤリと立っていたのです。
「ゆっ、ゆうれいだ!」
お母(かあ)さんは腰(こし)が抜(ぬ)けて、その場(ば)でガタガタとふるえていましたが、幽霊(ゆうれい)はなにもせず、なにかをいいたそうな表情(ひょうじょう)で、ジッとお母(かあ)さんの顔(かお)を見つめています。
お母(かあ)さんは、幽霊(ゆうれい)は自分(じぶん)からは口をきけないという話(はなし)を思い出(おもいだ)し、そして勇気(ゆうき)をふりしぼってたずねました。
「神(かみ)の名において。なにゆえに、わたしをなやますのですか?」
すると幽霊(ゆうれい)が、うつろな声(こえ)で返事(へんじ)をしました。
「神(かみ)の名において、と、いってから、はなしかけてよかったな。そうでなかったら、おまえはぶじではいられなかっただろう。いいか、こわがらずに、わたしのいうとおりにするのだ。このポンプをもちあげて、わきへうごかせ」
お母(かあ)さんは、そんなおもいものを一人でもちあげられるわけがないと思(おも)いましたが、とにかく、幽霊(ゆうれい)の言(い)うとおりにやってみました。
すると、ポンプはかんたんに動(うご)きました。
「う、動(うご)いた。あら、なにやら光(ひか)るものが。・・・これは!」
なんと、ポンプの下には大きな穴(あな)があって、そのなかにたくさんの金貨(きんか)や宝石(ほうせき)がつまっていたのです。
お母(かあ)さんがビックリしてながめていると、幽霊(ゆうれい)がいいました。
「これは、わたしが生きているあいだにためた金だ。これをかくして、だれにもしらせずに死(し)んだために、死(し)んだあともやすらかにねむれなかったのだ。この金をぜんぶやるから、農場(のうじょう)のためだけにつかってくれ」
そういいおわったとき、幽霊(ゆうれい)のすがたはだんだんうすれて、ゆっくりと空にのぼっていきました。
お母(かあ)さんはすぐに水をくむと、子どものところへもっていきました。
その水をのんで、子どもはグッスリとねむり、目がさめたときには、病気(びょうき)はすっかりよくなっていたのです。
そのあと、一家(いっか)は幽霊(ゆうれい)のお金で家(いえ)をたてかえたり、畑(はたけ)をひろげたりしたので、農場(のうじょう)はいままで以上(いじょう)にりっぱになりました。
もちろん、あの夜(よる)いらい、幽霊(ゆうれい)があるきまわることはなくなりました。
おしまい
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