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11月17日の世界の昔話

小ギツネのライオン退治

小ギツネのライオン退治
スーダンの昔話 → 国情報

 むかしむかし、ある森に、たくさんのけものたちが住んでいました。
 大きなけものも、小さなけものも、みんなそれぞれ自分にあったくらしかたをして、平和に住んでいました。
 ところがある日、その森に、一ぴきのライオンがやってきたのです。
 ライオンは、てあたりしだいにけものをつかまえては、なさけようしゃなくたべてしまいます。
 けものたちはこまりきって、いろいろとそうだんしました。
 そうだんがまとまると、みんなでそろってライオンのところへいきました。
 ライオンは木のかげにねそべって、ひるねをしていました。
 けものたちは、ライオンからずっとはなれたところにたちどまりました。
 そして山イヌが、前にすすみでていいました。
「えらいライオンさま。おねがいがあってまいりました」
 ライオンは、だるそうにふり向きました。
「なんの用だ?」
「ライオンさま。あなたさまがこの森においでになりましてから、わたくしどもは、一日もおちついていられません。いつ、あなたさまにたべられるか、わからないのですから。いっそのこと、みんなでそろってにげだそうかなどと、考えてもみました。でも、それではあなたさまがおこまりでしょう」
 ライオンは、ふきげんそうにうなり声をあげました。
「まあ、まあ、お聞き下さい」
と、山イヌは話しをつづけました。
「そこでライオンさま。いかがでしょう。わたくしどもが毎日くじをひいて、くじにあたったものがあなたさまのお食事になる、と、いうことにしては。そのかわり、ほかのものは自由に、森をかけまわらせていただきたいのでございます」
 ライオンは、ちょっと考えこみましたが、
「よかろう。ではさっそく、きょうからそうしろ」
と、いって、またひるねをしました。
 そこでその日から、毎日、お日さまがちょうどま上にくるころに、森のけものたちは集まってくじをひきました。
 そしてくじにあたったものが、ライオンのところへつれていかれました。
 さて、ある日のこと。
 小さな子ギツネが、くじにあたりました。
 すると、子ギツネは、
「みなさん、ぼくをライオンのところヘ一人でいかせてください。ぼくはライオンをやっつけてやるつもりです。みんながまた、もとどおり平和にくらせるようにね」
と、いいだしました。
「ライオンをやっつけるって? ちっぽけなおまえがかい。どうして、そんなことができるんだ?」
 けものたちは、口ぐちにさけびました。
「それはご心配なく。とにかく、一人でいかせてください」
 そして子ギツネは、一人ででかけました。
 けものたちは遠くから、そっと、ついていきました。
 ライオンのいるしげみのすこし手前で、子ギツネは木のかげにかくれました。
 ライオンはねそべって、食事がくるのをまっていました。
 ところが、きょうにかぎって、なかなかけものたちはあらわれません。
「どうしたんだ? おそいぞ。まあよい。もうすこしまとう」
 ライオンは、またねむりました。
 お日さまは、どんどん西にかたむいていきます。
 それでも、食事はきません。
 おなかのすいたライオンは、本気でおこりだしました。
 はねおきると、ものすごいいきおいで、森のほうへかけだしました。
 そのとき子ギツネが、かくれ場所からとびだして、ライオンをよびとめました。
「ライオンさま。王さま。なにをそんなに、おこっていらっしゃるのですか?」
「なにを、おこっているだと!」
 ライオンは、おそろしい声でほえました。
「一日じゅう、腹をすかせてまっていたのに、おまえたちはやくそくをやぶったではないか。もうゆるさん。すぐにおまえをたべてやる!」
「ああ、つよいライオンさま! おまちください。じつは、たいへんなことがおこったので、お知らせにきたところです」
「なんだ。早くいえ!」
「きょう、あなたのお食事のくじに、わたくしのおとうとがあたりました。さっそくつれてこようとしましたら、とちゅうで、ほかのライオンがとびだしてきたのでございます。そしてことわりもなく、あなたさまのお食事のおとうとをさらっていってしまいました。そこであなたさまにたすけていただこうと思って、こうしてかけつけてまいったのでございます」
 ライオンは、くやしがりました。
「なんだと! わしよりつよいライオンが、いるというのか!」
「とんでもない! もちろん、あなたさまのほうがおつよいにきまっています。ただ、そのライオンめは、あなたさまなんか二つかぞえるうちに、やっつけてみせるなどと申しまして。ライオンさま。もしよろしかったら、そのライオンのかくれがへ、ご案内しましょうか?」
「すぐに案内しろ!」
と、ライオンはさけびました。
 子ギツネはさきにたって、ライオンを森のおくへさそっていきました。
 子ギツネは、森の井戸(いど→詳細)のそばでたちどまると、声をひくくしてライオンに教えました。
「ほら、ごらんなさい。あそこですよ」
 ライオンは井戸に近づいて、中をのぞきこみました。
 するとくらい水のそこで、大きなライオンがキバをむいています。
 もちろん、そのライオンは水にうつった自分なのですが、ライオンはそんなことには気づきません。
「こいつめ、見ておれ!」
と、さけぶなり、ライオンは深い井戸にとびこみました。
 そして、そのままおぼれ死んでしまいました。
 小さな子ギツネは、おどりあがって喜びました。
「見てくれ! 見てくれ! ライオンをやっつけたぞ。もう、おそろしいライオンはいないんだ。平和がまたきたんだ!」
 森のけものたちは、みんな井戸にかけつけて、ライオンの死んだのをたしかめました。
 けものたちは、小さな子ギツネをほめて、うなずきあいました。
「つよいことは、たいしたことだ。だが、かしこいことは、もっとすごいことだ」

おしまい

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