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12月14日の世界の昔話

クモとリス

クモとリス
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 むかしむかし、畑しごとの上手なリスがいました。
 リスは毎日毎日、ピョンピョンピョンと枝から枝へ飛びうつっては、遠い畑へでかけました。
 広いリスの畑には、トウモロコシがよく実りました。
 取り入れ近づいたある日のこと、クモがリスの畑を通りかかりました。
「ほう、これはりっぱなトウモロコシだ。いったい、だれの畑だろう」
 クモは、あたりを見まわしました。
「はてな? 家はどこにも見えないし。こんなところまでやってくるのは、いったいだれだろう? そうだ、畑へくる道をたどっていけば持ち主がわかるだろう」
 クモは畑のまわりを、グルリとまわって道をさがしました。
 ところが、リスは枝から枝へとわたってくるので、道はどこにもありません。
「これはふしぎ。・・・うむうむ。ひょっとすると、この畑をそっくりちょうだいできるかもしれないぞ」
 よくばりグモは、ある作戦を思いついて、ニヤリとわらいました。
 そして家に帰ると、家の者たちにいいました。
「あしたは、お父さんについておいで。すばらしいところへ案内してやるからね。そこで、たった一日だけでいいから、いっしょうけんめい働いてもらいたい。そうすりゃ、来年まで働かなくってもいいよ」
 あくる日、クモの子どもたちはお父さんのあとについて、リスの畑へやってきました。
 それからみんなで、クモの家からリスの畑まで、ながいながい道をつくりました。
 そしてできた道を、しっかりとふみかためます。
 こうしておけば、だれが見ても、クモがトウモロコシ畑へかよったと、思うにちがいありません。
「さあこれで、おれの畑ができあがった。みんな、トウモロコシをとりいれなさい。えんりょはいらない。ドンドンとりいれるんだ」
 クモの子どもたちは、せっせとトウモロコシをとりいれました。
 つぎの日も、そのつぎの日も、クモの子どもたちはトウモロコシをとって帰りました。
 まもなくリスは、トウモロコシがぬすまれているのに気がつきました。
 リスはトウモロコシドロボウをつかまえようと、木の上にかくれて畑を見はっていました。
 そこへクモが、子どもをひきつれてやってきたのです。
 クモたちがトウモロコシをかりとろうとしたとき、リスは木の枝からとびおりました。
「どうして、ぼくのトウモロコシをぬすむんだ!」
と、リスがいうと、
「なんですと? これはわたしのものです。あなたこそ、ひとの畑にとびこんできたりして、しつれいじゃありませんか」
と、クモがいいかえしました。
「うそだ! ぼくの畑だよ」
 リスはがカンカンにおこると、クモはニヤリと笑っていいました。
「へえ、あなたの畑ですって? アハハハハ、笑わせないでくださいよ。わたしたちがここへくる道のほか、あなたのくる道なんかないじゃありませんか」
「ぼくは道なんかいらないんだ。いつも木をつたってくるんだもの」
 リスとクモが言いあらそっているあいだも、クモの子どもたちは、トウモロコシをドンドンとっていきます。
 リスは、大声でいいました。
「ドロボウめ! 裁判官(さいばんかん)にうったえてやる! ぼくがだいじにそだてたトウモロコシをぬすまれて、だまって見ていられるか!」
 リスはクモをつれて、裁判所へいきました。
 すると、裁判官がたずねました。
「畑へいく道をつくったのは、クモだな」
「はい、道をつくったのはクモです」
と、リスがこたえました。
「あれが、リスの畑だというしょうこは、なにもない。それなら畑は、道をつくったクモのものだ」
と、裁判官はリスにいいわたしました。
 あくる朝、畑をとられたリスは、いっしょうけんめいつくったトウモロコシを、クモたちが持って帰るのを、ボンヤリとながめていました。
 クモたちはのこらずとりいれると、トウモロコシの大きい荷物をひっぱって、ヨロヨロと家へ帰っていきました。
 そのときとつぜん、空がくらくなって、大つぶの雨がたきのようにふってきました。
 クモは荷物をおいたまま、近くの空き屋にとびこみました。
 雨は、ますますはげしくふってきましたが、しばらくすると、雨はピタリとやみました。
 青空がひろがって、またお日さまが顔を出します。
 クモはトウモロコシをおいてきたところに、ひきかえしました。
 そして荷物の近くまできたとき、「アッ!」と、さけんで、立ちすくみました。
 大きなカラスがトウモロコシの上にのっかって、羽をいっぱいにひろげているのです。
 カラスはとても大きいので、羽の下のトウモロコシは、すこしもぬれていません。
 クモはカラスに頭をさげました。
「ありがとう、カラスさん。わたしのトウモロコシをまもってくれたんですね」
 するとカラスが、イジワルな顔で言いました。
「あんたのトウモロコシだって? じょうだんじゃない! これはおれのだよ。道ばたに、だいじな荷物をおきっぱなしにしていくやつはいないだろう。これはおれのだ」
 それからカラスは、大きなツメでトウモロコシをつかむと、空高くまいあがっていってしまいました。

おしまい

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