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12月18日の世界の昔話
  
  
  
カンチールとバナナ
ジャータカ物語 → 詳細
 むかしむかし、カンチールというかしこくて小さなシカがいました。
  ある日カンチールは、森のおくで、とてもすばらしいバナナの木をみつけました。
  とても大きくておいしそうで、見ているだけでもよだれが出てきそうです。
  でも、カンチールはシカなので、木にのぼってとることはできません。
  「なんとか取る方法は・・・。そうだ! サルくんにたのんでとってもらおう」
  さっそくカンチールがサルに話すと、サルは大よろこびでいいました。
  「よし。ぼくがとってあげよう。さあ、どこにあるんだい?」
  くいしんぼうのサルが、カンチールにいいました。
  「おしえてあげるけど、そのかわり一本とったら、ぼくにも一本くれなきゃだめだよ」
  「もちろんだとも。一本でも二本でも、ほしいだけとってあげるよ」
  と、サルはやくそくをしましたが、サルはうそつきです。
  バナナの木をおしえてもらうと、じぶんひとりだけたべて、カンチールにあげようとしません。
  「ようし。こうしてやる!」
  おこったカンチールは、とがった小石をたくさんあつめました。
  それをあと足で、ビュン、ビュンと、サルめがけてけりとばします。
  「あいたたたた!」
  サルのおしりにとがった小石がビシビシとあたるので、サルはまっ赤になっておこりました。
  「よくもやったな、カンチールめ!」
  サルはたべていたバナナをもぎとると、カンチールになげつけました。
  たちまち、カンチールのまわりはバナナでいっぱいになりました。
  「もういいよ。うそつきサルくん。こんなにたべられないよ」
  カンチールは山のようなバナナをたべながら、サルにいいました。
おしまい